第7章 シャブビドゥとキャロライン、抱き合わせの前世

その次には、白人たちに迫害されて死んだ少年シャブビドゥと、
民衆に尽くしながらも、殺されたキャロラインという
2つの抱き合わせの前世を体験しました。
上の立場と下の立場、両方の立場を学ぶことが必要とのメッセージを受けました。

0123.2つの前世をみたケース

次にご紹介するのは、彼女が1度のセッションで2つの前世をみたケースです。

前世回帰の仕方は、クライアントさんによって実にさまざまです。

まるで映画を観ているかのように、1つの人生での出生から最期の時までをくっきりと鮮明に見る人もいれば、スライドショーのようにその人生での重要な場面がワンショットずつ展開する場合もあります。

クライアントさんによっては、ほとんど映像は見ず、感覚や雰囲気だけで人生を追っていくタイプの人もいます。

また、たいていの場合は、1回のセッションで1つの前世を経験していただきますが、人によってはいくつもの前世の場面を体験する方もいます。

彼女の場合は、視覚と聴覚そして体感覚を使って、まるで映画を観ているかのように、またはその映画の中の主人公である自分自身の肉体と心に入り込んで前世を体験します。

1つの前世を詳細に鮮明に体験していくので、ほとんどの場合は1回のセッションで1つの前世を思い出すのですが、時にはいくつかの前世をいっぺんに体験することもあります。

そんな時は、たいていそれらの複数の前世を見るということに意味がある時です。

それらの複数の人生には、なんらかの関連性があり、同時期にそれらの人生を知ることに意味がある時に彼女は複数の前世を体験しているようです。

例えば、2つの前世を見て初めて1つめの前世を潜在意識が選んだ意味がわかるというような時です。

今回はそんなケースのうちの1つをご紹介してみましょう。



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0124.もう1つの前世の扉を開ける

そうして彼女はまた新たなドアを開きました。

新たな前世での彼女が降り立った地面は、カラカラに乾いてひび割れた土の上でした。

「裸足です・・・足首はとても細い・・・痩せています。足はざらついています。足の裏は硬くて・・・足の裏の皮はとても厚い感じです。皮膚は黒いです。・・・黒人です」

私は彼女がまたアボリジニだった時の前世に戻ってしまったのか、と思いました。しかしその時の彼女は、自分の肌の色を黒とは言わずに、黒褐色と表現していましたので何か違和感を感じました。
そこでさらにもっと自分自身をよく観察してもらいました。

「・・・ボロボロのズボンをはいています。上半身は何も着ていません。とても痩せています。少年です。8歳です。町の中にいます。土ぼこりがすごい・・・

人もたくさんいます。みんな痩せています。2,3人ごとにかたまっています。

建物の壁に・・・土壁です・・・寄りかかっています。

うつろな目をして、だるそうな感じで寄りかかっています」



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0125.水をこぼしちゃった・・・

彼女の潜在意識は、彼女をもう1つの前世へと導きました。

私は、彼女がより深くその前世の中に溶け込めるように誘導します。

「ではその黒人の少年であるあなた自身の体の中にぴったりと入って、その心と体で体験してください」

「・・・今、水をくんで運んでいるところ・・・あっこぼしちゃった・・・水をこぼしちゃった・・・」

彼女は鼻をぐずつかせて、少しベソをかきながら言います。

「どうしたの?お水は遠くから運んできたの?」

「うん・・・遠くから運んできたのに、せっかく運んできたのに・・・こぼしちゃった」

「どうやってお水を運んでいるの?」

「・・・バケツで・・・2つのバケツで・・・両手に持っているの・・・後ろから何か来る・・・車かな・・・ジープかな・・・」

バケツがあって、ジープが走っているとすれば現代からそう離れてはいない時代のようです。

彼女がバケツの水をこぼしちゃったと言ってベソをかいた時、私は彼女の中に間違いなく1人のいたいけない黒人の少年をみた気がしました。



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0126.少年の家族

「水をこぼして、君はどうしたの?」

「両方のバケツを置いて、ちょっと泣いた・・・すごく重いから・・・こぼしちゃった」

「水はどこから汲んできたの?まだ小さいのに大変だね・・・」

「うん・・・町の中心から汲んでくるんだ・・・噴水みたいな所があって・・・そこから・・・でもまた汲みに行かなきゃ・・・」

少年はそこでまた今来た道を引き返して、石で舗装された坂道を登っていきました。

私は少年の暮らしがわかる場面へと誘導します。

「じゃあ、今度は君が住んでいるお家に行ってみようね」

「・・・家が密集している・・・長屋みたいなお家がたくさんある。僕のお家は2部屋の小さなお家だ・・・お母さんが赤ちゃんを抱っこしている。

お母さんは頭を布で巻いて前でしばっている。兄弟もいる。弟が3人いる。その他にお母さんが抱っこしている赤ちゃん・・・僕が一番大きいお兄さん」

「そう・・・だから君が水を汲みに行っていたんだね。みんな何をしているの?」



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0127.僕の名前・・・

ここからは、少年の暮らしについてさらに詳しく聞いています。

「みんな水を待っていたんだ。食べるものが何もないから・・・水しかないから・・・

弟は毛布をかじっている・・・お腹がすごく空いてる・・・それにすごく暑いし・・・」

「そう・・・君の名前は?」

「シャブビドゥ・・・」

「シャブビドゥ君・・・いつからこんな風にお腹が空く生活なの?ずっと前から?」

「・・・半年位前から・・・僕が住んでいるのはアフリカのどこか・・・内乱みたいだ・・・

違う部族の男の人たちがたくさん攻めて来たの・・・同じ肌の色をしているアフリカ系の人たち。みんな、鍬(くわ)や鋤(すき)、鎌(かま)などの農機を持っている。

・ ・・敵対する部族の男たちが急に僕たちの部族が住む村に攻めて来た」

「そう・・・その時、シャブビドゥ君はどうしていたの?」

「僕は・・・家の中から見ていたんだ・・・震えながら、『お願いだからこっちに来ないで』と思いながら隠れながら見ていたんだ・・・その時、お父さんも殺された。僕たちの部族の男の人たち・・・応戦した男の人たちはみんな殺された・・・」



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0128.お腹が空いたなあ・・・

またしても彼女は侵略される側の前世に行き着きました。

キャベッツア、ファンジ、リッサ・・・これらの前世の他にも一方的に何の罪もない子供や弱者が侵略されたり、強者の犠牲にされる前世をたくさん彼女は経験しています。

彼女の心の原風景は・・・魂のルーツはとても哀しみに満ちています。

「今までも貧しかったけれど、それからもっと貧しくなったんだ。敵の部族は、市場もめちゃくちゃにして、町全体を破壊して行った。そうして食べ物を奪って行った。家も壊して・・・僕の家は盗られるものが何にもなかったけど」

私はあまりにも悲惨な状況に抵抗も出来ず、ただおびえながら運命を受け入れるしか術のない貧しい1人の少年の告白に胸がつまるような思いでした。

「かわいそうに・・・今、町の中はどうなっているの?」

「食べ物がないから、みんなうつろな目をしている。道路で座っている人たちは死ぬのを待っているだけ・・・」

「シャブビドゥ君はどう?」

「・・・お腹が空いたなあ・・・3日くらい食べていない・・・3日前くらいにボランティア団体の人の配給で食べたっきりだから・・・」



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0129.もうすぐ死にそうだ・・・

「何を食べたい?」

「・・・炭水化物みたいな・・・芋みたいなものとチリコンカンみたいな豆を煮たようなものが食べたい・・・お腹が空いたなあ・・・」

私はなんだか一刻もはやく彼女とシャブビドゥ君をこの場から連れ出したい気持ちにおそわれました。

「ではその後のことがよくわかる人生の次の場面へと移りましょうね」

と言ってその場から時を進めました。

しかし、彼女もシャブビドゥ君もその場面から連れ出すことは出来ませんでした。

「・・・僕も、もう死にそうだ・・・息が絶え絶えで・・・ぐったりしている・・・」

「あれからずっと何も食べていないのですか?他にも誰か亡くなっているの?」

どうもシャブビドゥ君の人生での次の場面とは、家族でお腹を空かせていたあの時から何日か経った日のようです。



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