第4章 獲物として狩られたファンジの学び

3度目の前世は、黒褐色の肌をもつアボリジニーの少年ファンジでした。
この少年は白人のスポーツハンティングの対象として、撃たれて死にました。
そこで、動物が狩られる時の恐怖を、学びます。

0039.新たな前世での僕の体は・・・

彼女はセッションを重ねるごとに迅速にそして深い催眠に入るようになっていきました。

私は急速に催眠に入れる手法を使い、新たな前世へと誘導しました。

そうして次に彼女が訪れた前世は、またもや意外な人生でした。

「今、あなたはどこにいるのですか?」

「土の上です・・・土の上を歩いています。腰に毛皮のようなものを巻きつけています。

子供です。少年です・・・・6歳・・・いえ7歳になったばかりです。

髪はすごく短いです。そう・・まるでパンチパーマのように縮れています。

手も足も顔もみんな黒いです。体全部が黒い・・・黒褐色です」

この前世での彼女は、有色人種の少年であるようです。

「今、君がいるところはどんな場所? なぜ、そこにいるの?」

「今、僕は家に帰るところ」

彼女は、また、いつものように前世での自分の肉体に入り込んだようです。



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0040.みんな僕の体と同じ色をしている

「テントみたいな家が、ちらほらあります。土でつくった家です。

かまくらみたいな家です。人が何人かいます。

男の人も女の人も、子供もいます。みんな、僕の体と同じ色をした人たちです。でも、色の薄い人も濃い人もいます。

男の人は、上半身はみな裸です。腰の部分には何か巻きつけています。あっ・・・女の人も同じような格好です。上半身も裸です。

小さな子供は裸です。何も身につけていません」

「そこで、みんな何をしているのですか?」

「髪を頭の上のほうでおだんごみたいに結った女の人が、今、火をつけようとしています。家の外です。たぶん料理に使うための火だと思います」

「どうやって、火をつけようとしているの?」

「まきのようなものを立てて、火打ち石のようなものを思いっきり打ちつけています。ものすごく力が必要なんです。その女の人は耳に金属のような輪をつけているみたいです」

今回の前世は、いきなり、悲惨な状況からの幕開けではありませんでした。

この前世は比較的、穏やかな人生だったのだろうかという思いが、私の頭をかすめました。

しかし、どちらにせよ、彼女の潜在意識が選び引っ張り出してくれた前世なのですから大きな意味があるに違いありません。



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0041.今、男の人たちが帰って来ました・・・

ここからは、この前世での日常を聞いています。

「ご飯を食べる時は、外で食べます。家の前あたりで食べます。家に入るのは寝る時だけです。家は10戸くらい建っています。

ここは、森の中のようです。森の奥に少し開けた土地があって、そこは粘土質のような地面です。そこに10戸くらいの家をそれぞれの家族が建てて、暮らしています。

食べ物を盛るための器などもここで作っています。土をこねて、焼いて作ります。

・ ・・・・いま、男の人たちが帰ってきました」

「男の人たちはどこから帰ってきたの?」

「狩りです。サバンナのような場所で動物を狩ってくるのです。その動物をみんなでかついで帰ってきました」

「あなたはどんな気持ち?」

「嬉しいです。やった!という気持ちです。成功です」

「その動物の肉は食べるのですね?」

「はい。でも食べるだけではなく、すべて使います。肉はすみからすみまで全部食べますが、毛皮はかぶったり、衣服にしたりします。
動物の骨はテント(家?)の骨格部になります。角は楽器とか武器になります」



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0042.大人になったらどんないいことがあるの?

「楽器とは?どんなもの?」

「笛のようなものや、太鼓のようなものや、打楽器のように使うものが多いです。僕たちはいつも、その楽器で練習をしています」

「何のために練習をしているの?」

「お祭りかな・・・儀式です。そうだ、成人の儀式です。大人になるための儀式があるのです」

「あなたは、その儀式に出たことがあるの?」

「僕は、まだ子供だから出ていません。見ているだけです。でも、早く出たいな。早く大人になりたい」

「大人になったらどんないいことがあるの?」

「狩りに行けるし、みんなを守れるし、結婚もできます。でも、大人になる儀式は難しいです。

頭に葉っぱみたいなものをいっぱいつけて、熱く焼いた石を地面に並べます。その石を踏みながら、木の棒をくぐったり、飛び越えたりしています」

「熱くないの?」

「大人の男だから、大丈夫です」

「友達はいる?」

「うん。一緒に虫をつかまえたり、踏みつぶしたりして遊んでいます。それから、木に登ったり、狩りごっこをしています。

でも、家の手伝いもたくさんします。水を汲みにいくのが僕たちの仕事です」



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0043.僕の名前は・・・

つぎに、私はその前世での家族について質問しています。

「僕は、7歳です。でも、あまり年齢とかの概念はないみたいです。僕の家族は、お父さんとお母さんとお兄ちゃんと弟と妹です。

弟か妹かわからないけど、僕よりも小さい兄弟が3,4人いるようです。

お父さんは、背が高いです・・・ここの男の人はみな細長いです。でもみんなとても筋肉質の体をしています。

お母さんは、けっこう太っています。女の人は太っている人が多いです。あっ・・お母さんはお腹に子供がいるみたいです。また、生まれます」

「家族は、みな、仲が良いですか? 家族のなかで特に親しみを感じる人はいますか?」

「弟はかわいいです。僕のあとばかりついてきます。そして、僕の真似ばかりします。

お父さんは怖いです。すぐ暴力をふるいます。

でも、親はみな、そういうものだと思っています。親にとって、子供は働き手であるのです。だから、なるべく男の子を産みたいと思っているようです」

「いま、お父さんが僕を呼びました。僕の名前は、ファンジです」



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0044.来年、違う人たちが来る!

前世での自分の名前を思い出してくれると、ヒプノセラピストとしては、その後の誘導がしやすくなります。

ですからできるだけ、名前を思い出せるように誘導します。

自分の名前を呼ばれることによって、前世での人格がはっきりと意識でき、さらに細かいことを思い出せるようになるのです。

つぎに私は、その前世での重要な場面にいくように誘導します。

「来年、違う人たちが来る」

「違う人たちとはどんな人たちですか?あなた達とどう違うのですか?」

「僕たちとは何もかも違う人たちです。大人たちは最近いつもその話をしています。

もしその人たちが来たら、なんとか追い払おうと話し合っています」

「では、その人たちはあなたたちにとっては、あまりよくない人たちなのですね」

「よくわからないけれど・・・大人たちはその人たちが来ることをとても嫌がっているようです」

そこで、時を進めて、その翌年に誘導していきます。



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0045.魔法の武器を持った白人たち

その後、この問題はどうなったのかを聞いています。

「いま、部落のなかのえらい人・・・村長みたいな人と新しくやって来た人たちが話し合っているところです」

「新しくやって来た人たちを、ようく観察してみて」

「白人です。馬に乗ってやって来ました。ファンジである僕や部落の仲間たちは、その白人たちを見てヘンな服だと思っています。でも、今こうして見ると普通の服装です。

髪型も服装も肌の色もなにもかも僕たちとは違います。僕たちは不安な気持ちで、どうなるのだろうと思いながら見つめています」

その後、ファンジ君たちの部落は、新しくやって来た人たちの管理下におかれることになりました。

「なぜ、追い返さなかったのですか?」

「それは、彼らたちが怖かったのではなく、彼らが持っていた武器が怖かったからです。彼らはそれぞれ、猟銃を持っていました。それが、僕たちには、まるで魔法の武器のように見えたのです。

彼らのうちの1人が、僕たちの仲間の大人の男の人を、その猟銃で撃って殺したのです。

動物も撃たれました。

ものすごく大きな音がしました。

僕たちの武器は、槍とか弓とかブーメランのようなものでしたから、そんな武器を見るのは初めてだったのです。

彼らはわざと動物や大人の男を殺して、僕たちに力を見せつけたのだと思います」

それから、ファンジ君たちは白人の管理下で生活することを余儀なくされました。



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