「食事は1つずつワイングラスのように足がついた食器でいただきます。小さな御膳というか、よく旅館などの食事の時に出される小さなテーブルのようなものに1人ずつ配膳されます。
雑穀米のようなものと山菜・・・ぜんまいとかそういうものと・・汁とお漬物です」
「そう、喜久乃さんの好物はなんですか?」
「・・・くるみを黒糖でコーティングしたようなお菓子が好物です」
私はコーティングというこの前世の時代にはなかったであろう言葉が、ほほ笑ましく思えました。
「それは誰かが作ってくれるものですか?」
「いいえ、買うようです。そういう物売りが定期的にやって来るのです」
「普段は誰かと遊んだりするのですか?」
「侍女と・・・でもその侍女たちもみな身分の高い家の娘さんたちです。身の回りの世話や話し相手になってくれたり、一緒にお勉強をしたりします。掃除や選択や食事の支度などは別の立場の女の人たちがやります」
私は今までになく前世での彼女の生活が豊かで安全であることに、ほっと胸をなでおろしていました。
まだ今のところ「いつもの人」らしき男性は現れていないようです。
そこでその前世での時をもう少し進めてみることにしました。