今回は、不妊症で苦しんだ亮子(仮名)さんの事例をお話します。
(クライアントさんの許可を得られた部分だけご紹介しています)
亮子さんは、大学で事務をしている聡明な女性です。
亮子さんの最初の結婚は、23歳の時でした。
大学時代から交際していた同級生と結婚したものの、わずか1年で離婚しました。
今の夫である時雄さん(仮名)とは、10年前、28歳の時に結婚しました。
亮子さんと時雄さんの結婚生活は、穏やかで温かなものでした。
2人とも子ども好きで、結婚した当初は2人で、
「子どもは3人がいいね」
「男の子1人と女の子2人、欲しいね」
「いや、女の子3人っていうのも可愛いぞ」
などと、よく話し合ったと言います。
ところが・・・
結婚して5年経っても、念願のベイビーは、なかなか亮子さんのお腹に宿ってはくれませんでした。
そこで、2人は思い切って、不妊治療に踏み切ることにしました。
初めのうちは、「仲がいいと子どもが出来にくいというからね」
などと周囲の人たちに言われたりして、自分でも「そういうものなのかな」などと思っていたそうです。
実際、亮子さんにも、時雄さんの方にも、これといって妊娠しないような体の事情はなかったそうです。
「だから、私も夫も、不妊治療をすれば、すぐにでも、子どもが授かると思っていたところがありました」
と亮子さんは、うつむきながら話してくれました。
不妊治療は高額な上に、思った以上に痛くて、辛い治療でした。
初めのうちは、「今度こそ、妊娠しそうな気がする」
「今月、頑張れば、こんな苦しみも終わるはずだ」
と自分に言い聞かせながら、頑張っていました。
しかし、残念ながら、不妊治療を始めてから、2年経っても、亮子さんは、妊娠しませんでした。
次第に夫も「もう、子どもはいいんじゃないか?
2人だって、幸せに生きていくことは出来るのじゃないか?」
と亮子さんに言い始めました。
その当時のことを、亮子さんはこう語っています。
「信じられませんでした。私が、こんなに辛い思いをして、頑張っているのに、夫は何にもわかってくれていない、と思いました。
何としても、2人の子どもが欲しいと思っているのに、この人は簡単にそれを諦めようとしている。
2人の心はすれ違っていると思いました」
それからまた1年、不妊治療を続けましたが・・・
やはり赤ちゃんを授かりません。
仕方なく、とりあえず、不妊治療は中止することとなりました。
その頃でした。
亮子さんが私の元を訪れたのは・・・
「もう、毎日が辛いというか・・・
今では夫と一緒のベッドで寝るのも苦痛なのです」
と、亮子さんは、欝々とした面持ちで語り出しました。
あんなに仲が良かったご夫婦が、今では何だかギクシャクとして、子どもを作るどころか、この人とこの先の人生を一緒に過ごしていけるだろうか、と感じているようでした。
そこで初めのセッションでは、カウンセリングをじっくりした後、インナーチャイルド療法 をしました。
中学2年生、小学5年生、3歳にそれぞれ退行し、インナーチャイルド達とやりとりしました。
その後の亮子さんのご感想を以下にご紹介します。
「自分の中に、先生がおっしゃるとおりに、たくさんの小さな自分がいるのだ、ということに気づきました。
覚えていることや、忘れていることなどが、たくさん、催眠に入っている間に、出てきました。
だんだん、自分の声や話し方が、小さい子どもになってしまっているのを、どこかで、大人の自分が不思議そうな気持ちで見ているような、そんな感じでした。
これが催眠というものなのか・・・
と目が覚めた時に、ぼんやりしながら考えました。
まだ、まだ何が変わったのか、よく自分ではわかりませんが、先生が、『そのうちわかりますよ』と、言ってくださったので、良かったです」
そして、亮子さんは、2回目のセッションにやってきました。
初回は、インナーチャイルド療法 をした亮子さんでしたが、2回目のセッションも、再びインナーチャイルド療法をしました。
今度は7歳、そして出産時へと、退行しました。
亮子さんは、催眠に入るのが、前回よりもとっても上手になっていました。
そのおかげで、とても深いトランスに入れることができ、その分深いセラピーになりました。
その時の亮子さんのご感想を、以下にご紹介します。
「今日は、よく泣きました。
自分でもよくこんなに泣けるものだと、びっくりするほど、涙が出て、止まりませんでした。
完全に私は子どもになっていました。
特に赤ん坊になってしまった時には驚きました!
赤ん坊でも、お話が出来るものなのか、と後で思いました。
母が赤ん坊の私をどれだけ愛してくれていたのか、を実感しました。
催眠療法は素晴らしい、と本当に感じました。
私の両親は、共働きだったので、私と妹は鍵っ子でした。
特に淋しいとも感じたことはなかったのに、催眠の中の私は、とても淋しがっていました。
また、両親も不器用な人たちでした。
そのため、あまり子どもをベタベタと可愛がれなかったこと、生活に手一杯で、現代の親御さんのように、子どもに愛情を表現する余裕がなかった、ということに気づきました。
たくさんの気づきを本当にありがとうございました」
前回までの2回のセッションは、インナーチャイルド療法 でした。
この3回目のセッションは、前世療法 をしました。
亮子さんは上手に何の抵抗もなく、前世へと入って行ってくださいました。
前世での亮子さんは、第二次大戦中のハンナというユダヤ人の女性でした。
ハンナの父親は銀行の頭取であり、たいへん裕福な子ども時代を過ごしました。
ところが、ナチス党が政権をとるや否や、次第にユダヤ人であるハンナたちは、差別を受けるようになりました。
自由に町を歩くことさえも、できなくなったのでした。
そして、ハンナが16歳の時、ハンナの家族である、両親、ハンナ、そして3歳年下の妹、5歳年下の弟は、みな強制収容所へと送られました。
以下、亮子さんの前世の概要と、ご感想の一部です。
「私はユダヤ人の少女でした。
両親も、妹も、弟も、強制収容所のガス室で殺されました。
私たち家族は、強制収容所に着いて、すぐに長い列に並ばされ、働ける者と、働けない者に分けられました。
両親と私は、働ける者の方の列に、そして、妹と弟は働けない者の方の列に分けられました。
最初、私は、妹と弟はまだ小さいから、働かなくて済むのだ、ああ、良かったなと安心しました。
でも、それから、何日かして、妹と弟は、あの後、すぐにガス室に連行されたことを知りました。
私は母と一緒でした。母は妹や弟のことを心配して、そして2人が殺されたことを知り、半ば半狂乱になりました。
私は、母を何とか元気にさせなくては、と思いましたが、
母はすっかり衰弱し、生きる力を失ってしまいました。
そんな母はすぐに親衛隊に目をつけられ、ガス室送りとなりました。
もはや、私には、父だけしかいないと思いました。
何とか生き延びて、父と再会することだけが、私の希望でした。
そんなある日、私はあるメンバーに選ばれました。
私を含め、若い女性ばかりのグループでした。
私たちが連れていかれた所は、病院のような、実験室のような薄暗い、匂いのきつい棟でした。
私は、そこで、ナチスの人体実験のモルモットにされたのです。
私に施された実験は、赤ん坊を妊娠させて、その後、胎内の赤ん坊にいろいろな処置をして、それがどう赤ん坊に影響するか、という恐ろしいものでした。
そして、結局、私の赤ん坊は、さんざん実験に使われ、お腹の中で死んでしまいました。
その直後、私はガス室に送られ、殺されました。
前世を体験して、驚きました・・・
私が、私ではなく、全く別の人間だったことがあるなんて、と。
それも、こんなに恐ろしい体験をしていたとは・・・
今回の人生で、病院のアルコールの匂いに、すごく嫌悪感を感じる理由がわかりました。
それから、子どもが欲しいと思いつつも、頭のどこかで「妊娠してはいけない。子どもなんて出来たら、大変なことになる」というような声が聞こえていたことにも、気づきました。
ハンナさんからのメッセージで、
『あなたは、愛するご主人と一緒になれて幸せですよ。
私にも、好きな男性がいましたが、彼も戦争で殺されました。
あなた、は今のご主人を大切にしてください。
子どもがいるか、どうかなんて、どちらでも構わないことです。
2人が一緒に生きていること、それだけで本当に素晴らしいことなのですから・・・』
と言われました。
前世療法が、こんなにも深いものだとは、思いませんでした。
これまで前世の本を読んだりして来ましたが、自分がこんなにリアルな体験をするとは思いませんでした。
何かが変わったような気がします。
また機会があれば、別の前世も見て見たいです。
どうもありがとうございました。」
その後、亮子さんは、再び、インナーチャイルド療法 と、前世療法を経験され、セッションを終了しました。
それから3年・・・
亮子さんは、自然妊娠で可愛らしい女の子を授かりました。
亮子さんいわく・・・
「この子はハンナの妹だと思います。
もう一度、今回の人生で一緒に過ごしたいと、やって来てくれたのだと思います。この子の目を見た瞬間、そう思いました。
大事にしてやりたいと思います」
とのことです。
この事例で行った、年齢退行・インナーチャイルド療法や、前世療法は、クライアントさんからの要望が、多いものです。
また、実際のセラピーでも、私はよく使います。
このようなセラピーができるようになるためには、年齢退行・インナーチャイルド療法や、前世療法を学べる
がおすすめです。
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