どんどん逞しくなっていく仲間達の姿を見送るたびに、自分がこの世界で一番の役立たずで、生き延びる資格を持たない生き物のように感じていたのです。
そんな役立たずで、ひ弱な私を雌熊は、辛抱強く見守り、自然の中で生きていくためのルールを身を持って教えてくれました。
私は、そんな雌熊に甘え、心から信頼し尊敬していました。
そして、いつか自分も雌熊のように大きくなり、強くなるのだと信じて疑っていませんでした。
そんな生活の中、時々、とても危険な匂いがテリトリーに漂うことがありました。
それは、人間達の匂いです。
私を捨てた両親のように、時々、ジャングルの中に人間達がやって来ます。
そんな時、私達は、叢や穴の中に息を潜めながら、じいっとしています。
みじろぎもせずに、息を潜めながら、私は不思議な歩き方をする嫌な匂いを発する生き物である人間に恐怖を感じながら、早くどこかに行ってくれればいいと願いながら見つめていました。
もちろん、その人間達が自分と同じ種族であるなどとは思いもしませんでした。
私達動物にとって、人間は嫌な匂いを発する危険な生き物だったのです。