生まれてすぐジャングルの中に捨てられた私の周りには二足歩行をする生き物はいませんでした。
他の生き物と比べて体毛が薄く、肌がむき出しになっている自分を、なにか出来損ないのように感じていました。
それでも、成長するにつれて雌熊に倣うように這い出し、やがて四つ足で歩き出しました。時々、二本足で立ち上がることはありましたが、それはあくまで雌熊がやるように何かを威嚇する時や木の上の食べ物を採る時のことであり、ほとんどの時間を四つ足で生活していました。
そのような生活の中で、私の足の裏は硬く頑強になりました。それと同じくらい掌もぶ厚く強固なものになっていたのです。
つまり当時の私にとって、両手は前脚であったわけです。
草むらや土や岩などの上を四つ足で走り回っていたのですから当たり前といえば当たり前なのですが、催眠下での私は、「人間の子の柔らかい肌でも、こんな風に育つと、順応してこのように強くなるものなのか・・・」などと、うすぼんやり考えていました。