この前世療法で、私が最初に体験した場面は、おそらく両手両足に硬い肉球ができて、4つ足で生活している私であったと思います。
泥じみた素っ裸で、ぼうぼうの髪、不潔きわまりない少女。
暮らしている家は? と訊ねられると、とたんに目の前に洞穴が現れたその意味が、この時よくわかりました。
人間としての言葉を持たず、感覚と感情だけの世界に生きる少女は、もちろん名前も持ってはいませんでした。
しかし、自分を命がけで守ってくれる雌熊という大きな心の拠りどころがありました。
雌熊は、人間の両親に捨てられた私に、蒸しかえるような暑さや叩きつけるスコールから逃れる術、虫や木の実、魚などを採り飢えをしのぐこと、獰猛な動物から身を守るために自分の匂いを隠す方法、水場の探し方、同じテリトリーで他の動物たちと共存すること・・・生きることの全てを教えてくれました。
雌熊にとっていつまで経っても自立できないひ弱な私を守りながら生活することは並大抵の苦労ではなかったことと思われます。