この時、私はまだ気づいていませんでした。この前世で私を生かすために無償の愛を注いでくれたこの雌熊こそが、日本に生まれ変わった私にとって非常に意味のある存在だったと知ることになろうとは・・・
雌熊に守られながら奇跡的に生き延びた私は、他の動物たちと自分との違いを感じていました。
ジャングルの中にはさまざまな生き物が生息していました。
彼らはそれぞれ大きさも形も色も鳴き声も生活のしかたも違っていました。
そういう意味では、人間である私も1つの個性を持った動物という点ではなんら変わりはありませんでしたが、決定的に彼らとは違う点があったのです。
それは、彼らはみなそれぞれ個性的ではありましたが、それぞれ自分と同じ種類の仲間がいました。しかし、私には自分と同じ種類の仲間がいませんでした。
もちろん雌熊は、私の親であり家族でしたが、私と雌熊は同じ種類ではないということを、私は知っていました。
生まれて間もない私を間引きのために捨てに来た私の両親のような人間をジャングルの中で見かけたことはあります。
しかし、まさかその見たこともないへんな毛皮を持った危険な匂いのする生き物と自分が同じ種類だとは夢にも思いませんでした。