生き物にとって､自分を何にも替え難いほど愛し､慈しんでくれる存在がいるということほど､強いことはありません｡

それだけで自分が生きる存在意義となります｡

たとえば､人間の子供も幼少のころに､親が自分のことを絶対的に愛してくれている､どんな自分であっても親は私を必要としている､と信じられる環境にいるだけで､自分自身や他人を認めたり愛せるようになります｡

私は動物の手で育てられるというこの稀有な前世で､実の人間の両親からは見捨てられはしましたが､血のつながらない､いいえ､それどころか種族さえ違う生き物に愛され､守られ､生かされました｡

私と雌熊の間には､言葉では言い尽くせないほどの絶対的な信頼と愛情があふれていました｡

催眠下での私は､雌熊と前世での自分である少女との間を埋め尽くされている深い情愛に驚いていました｡それは今まで感じたことがないほどの大きなｴﾈﾙｷﾞｰでした｡

雌熊と少女との間には理屈や道徳､意義などとは無縁な何かがありました｡

それは､とてもｼﾝﾌﾟﾙでありながらとどまることのない普遍的なものです｡誰にも奪うことは出来ない､そして決して減らない永遠の力だったのです｡