そんな動物たちは元気なうちはみな水飲み場にやって来ますが、怪我をしたり病気になったり、死期が近づいたりすると、水飲み場から遠い奥の方に身を潜めます。
そんな仲間たちのことをみんな知っていましたが、それは動物にとって自然のことでもありましたので、どうすることも出来ませんでした。
私は奥の方で療養している仲間たちや、静かに命の最期を迎えようとしている動物たちが水を求めていることを動物の勘で知っていました。
ある時、長年共にテリトリーで過ごした鹿のような仲間が、いよいよ最期の時をむかえるべく奥の方で身を丸めていました。
その場所を知っていた私は、そっとその様子をうかがいに行きました。
彼はいつもの伸びやかな姿態を力なく投げ出し、ハア、ハアと荒い息遣いをしていました。
私は、そばに近寄り匂いを彼の匂いを嗅ぎました。
彼の肉体は明らかに終わりに近づいていました。
彼は私の方をじいっと見つめ、わずかに鼻先を動かしましたが、いつもように冷たい鼻先を私に押し付けてくることはしませんでした。
私には彼が水を欲していることがわかりました。