前脚も水につけてしばらく冷やし、ざばっと2本の前脚を水から引き上げた瞬間、私の前脚の先(両方の手の平)に水が少し溜まっているのに気づきました。
手の平に溜まっている水をしばらくじいっと私は見つめていました。
そして、次の瞬間、両方の手の平を空に向けびったりとくっつけて丸めました。
そして、お椀のような形になった両手で水をすくいました。
小さな私の手の平にはほんの少しの水しかすくえませんが、それでも口に含んで走るよりはずっと多い量を運べます。
私は両手の中の水をこぼさないように気をつけながら、死期が近づいている彼の元に戻り、しゃがみ込んで、手からそっと彼の口元に水を含ませました。
今度は、今までよりもずっと大きな喉の動きが感じられました。
それから、彼は大きく目を見開き、私をじいっと見つめ、大きくばふっと息を1つ吐いて、そして逝きました。
私は彼の鼻先を舐めました。
私は、その時初めて自分の両手に他の動物にはない機能があることを知りました。
それから私は、弱っている動物たちのために両手で水をすくって運ぶようになりました。
それは私にとって大きな喜びでした。