私が動物たちの顔や背中を指先でちょっと強めに掻いてやると、彼らは気持ちよさそうに目を細めました。
催眠に入っていた私は、自分の指先にゴワゴワとした感触や少し粘りつくような感触をはっきり感じました。
それはさまざまな動物の毛の感触でした。
そして、それらの毛の感触と共に、乾いた干し草のような彼らの体臭も蘇ってきました。
私は、なんだか泣きたいような懐かしい思いが、身体中に広がっていくのを感じていました。
彼らの身体は本当に温かくて、生命力に満ち溢れていました。
1匹、1匹がそれぞれ完全な姿で、そして自立して、それぞれの人生を生きていました。
彼らの人生にはそれぞれ大きな意味がありました。
彼らには親がいて、子供がいて、そして仲間がいました。
彼らは1匹、1匹、それぞれ個性がありました。
彼らは1匹として同じ人生を歩んだものはいませんでした。
それぞれがあたりまえに個でありながら、共存して生きるすべを彼らは知っていました。
そしてそんな世界では、際立ってひ弱で、役立たずな私も自分なりの役目を見つけ、なんとか自立しようと必死でした。
他の動物と違い、自立するのに膨大な時間がかかる人間という種族に属する私が、ようやく自分の食べ物を見つけたり、他の動物のために水を汲んだり、身づくろいをしたり、と自分なりの生き方を見つけ始めた頃、その事件は起きました。