しかし、もともとノラ犬から生まれたチビは、鎖につながれることを嫌いました。でも、私と一緒に過ごすために、チビがそれを受け入れようとしている様子が、子ども心にもわかりました。
結局、引っ越しの際に、チビは家から逃げ出し、元の場所に戻って行きました。諦めきれない私は、母親と一緒に、一度チビを探しに行ったことがあります。
チビは、元の家の近くの空き地の空き箱がたくさん積んであるてっぺんにいました。そして、その下には、たくさんのノラ犬がいました。賢いチビは、ノラ犬たちのリーダーになっていたのです。
私が「チビ!」と呼ぶと、チビは私の方をじいっと見つめ、やがて尻尾を大きく振りながら、私の方に近づいて来て、鼻を摺り寄せ、私の口元を舐めました。
私と母親は、チビを連れて、新しい家に戻りました。チビは、私の後をついて、ずっと長い道のりを歩きました。
しかし、翌朝チビは、また姿を消しました。
私は、幼いながらに、チビはチビらしく、生きていくことを選んだのだと思いました。
そのチビの目は、あの雌熊の目でした。
私は、チビが生まれ変わって、私のそばにやって来てくれたのだ、と確信しました。