「少し大きくなって、僕も近所の酪農の手伝いをするようになりました。暮らしは楽ではありませんが、食べるものに困ることはありません」
この前世での彼女(ヤコブ)はかなり、内向的な性格であったらしく、始終、重い口調で、話すことがあまり、好きではないような様子です。
「お母さんは、相変わらず洗濯などの仕事をしています。そして、いつも不機嫌そうです。僕に愚痴ばかり言います。毎日、毎日・・・」
「ヤコブ君は、そんな時どうしているの?悲しくて泣いたりする?」
「ううん。僕はいつも、黙っているだけ。ただ、黙って聞いているだけです」
「ヤコブ君は、まだ小さいのに辛いね。お友達はいる?」
「いない。遊ぶとお母さんに叱られる。それに誰も、僕とは遊んでくれない」
「なぜ、お母さんは叱るのかな?お友達はどうして、ヤコブ君と遊んでくれないの?」
「お母さんは、自分だけが辛い思いをしているのがたまらないのです。だから、息子である僕が自由に子供らしく生活することを許せないのです」
これは、今生の彼女の視線からの分析でしょう。
「お友達は、みな、僕が暗い性格で、いつも汚い格好をしているので、僕を好きになってくれません」
ヤコブ君は、お腹を空かすほどではないにしろ、周囲に暮らす人々よりも、貧しい暮らしをしていたようです。そのうえ、お母さんはヤコブ君の世話を、あまり細やかには、やいてはくれなかったのです。