前世に入ってみて、自分自身が今までになく風変わりな男の風貌をしていることに、彼女は少し戸惑っている様子です。
首をかしげるような仕草をわずかに見せながら、彼女はボツボツと話していきます。
いつにないそんな彼女の様子が何だかおかしいような、またいつもとは違った前世の予感のような期待を感じながら、私は誘導を続けました。
「今、あなたはどんな所にいるのですか?」
私の質問にすぐさま彼女は答えます。
「私はとても長い塀に沿って歩いています。この長い塀の中は大きな建物があります。塀は白塗りの漆喰です・・・
それから、この塀の上には何か・・・瓦屋根のようなものがついています・・・なんというか、名古屋のしゃちほこのような・・・金色の角みたいなものがついています」
自分で話しながら、自分の話している内容に、ますます混乱している様が彼女の表情からうかがえます。
「あなたは、何のためにその塀に沿った道を歩いているのですか?」
混乱しつつも、数秒と間をおかず彼女は答えます。
「私は、いつもこうして散歩をしながら考えるのです。
人生の意味を・・・」
彼女の表情は困惑から確信へとはっきりと変化しました。
そして私も、いよいよ彼女が、この前世での核心に入ったことを察知したのです。