どうやらジュリアンは、八方ふさがりの状態のようです。そこで私は、ジュリアンの時を進めることにしました。
困り果てているジュリアンが、その後どうなったのかがわかる場面へと誘導したのです。
すると、ジュリアンの様子は一変していたのです。
「・・・走っている・・・怖い・・・逃げている・・・森の中を走っている・・・」
ジュリアンは、どうやらこの前世での最初の場面の中へと戻ったようです。だるそうな、うつろさは、もうどこにもなく、息せききって、走っている様子が伝わってきます。
「あなたは、いったい今、何から逃げているの?」
「はあ、はあ・・・家から・・・逃げている・・・」
喘ぐような声でジュリアンは答えました。
「何故? どうして家から逃げているの? お母さんとトーマスはどうしたの?」
「お母さんは・・・死んだ・・・熱が高くなって・・・ひからびたようになって・・・死んだ・・・トーマスもすぐ後を追うように死んだ・・・お腹が空いていたし・・・お母さんと同じ咳をしていた・・・私はトーマスが死んで・・・怖くなって、それで逃げてきた・・・」
「え? それじゃあ、家には死んだお母さんとトーマスがまだ残っているの?」
「そう・・・私はお母さんとトーマスを捨てて・・・逃げてきた・・・おきざりにしてにげてきた・・・ああ・・・私が2人を殺したようなものだ・・・」
8歳になったばかりの少女ジュリアンは、今、森の中を走りながら、むせび泣いています。