私の足や手の指の爪は垢や土で真っ黒です。顔は浅黒く、比較的目鼻立ちははっきりしています。なんだか東南アジアの子供のようです。
そして私が立っている足元は、じめじめとした土と木や植物に覆われ、周囲の風景はまるでジャングルのように木々や亜熱帯の植物が茂っていました。太陽の木漏れ日がうねった木々の間から差し込む薄暗い場所に私は立っています。
いったい私はこんなところで何をやっているのだろうと、今生の私が不思議がるので、思い切って小さな体の中に入り込むことにしました。
薄汚れた小さな痩せた少女の中に入り込むことに成功した私は、すぐにおかしなことに気づきました。
それは、その少女の肉体に入ったとたん、今までの思考や言語が遠のいていくのを感じたからです。
今までの前世体験では、前世の人格に入り込んだあとでも、その人格なりの思考や言語がなだれ込んできたのに、今回は全く違った感覚でした。
そう、まるで感覚そのものなのです。言語や思考ではなく、ただ強い感覚だけが私の中を満たしました。
それは、野性的なまるで動物のような肉体的な感覚とでもいうのでしょうか。聞こえるもの、触れるもの、全てがあきれるほど鮮明でした。こんなにも自分の耳が周囲の全ての音を捉えたのは初めてでした。
そして、私は自分の足の裏がとても硬い皮膚に覆われていることに気づきました。まるで皮が何十にも重ね合わさっているような、分厚い靴底を貼り付けているような感覚です。