「私は若かったので、周りの人たちよりも長い間生き延びました。どうして、こんなめにあうのだろうかと思っています。
何も悪いことをしていないのに・・・・。
あるとき突然、違う部落の人たちが攻めてきて、わたし達は、あっという間にここに閉じ込められました。」
彼女は眉間にしわを寄せながら、しわがれたような声で話します。
「初めは老人などや小さな子供たちが、下痢をしたり、吐いたりし始めました。洞窟の中はひどい臭いです。でも、すぐに気にならなくなります。慣れてしまうのです。そうして、徐々に衰弱して、死んでいきます。
弟が生きているうちは、なんとか逃げられないだろうかと考えていました。でも、弟が死ぬことを悟ってからは、あきらめました。
私は、弟がぐったりと衰弱し始めてからは、もう、弟にがんばって欲しいとは思いませんでした。
なるべく、早く、楽に弟が死んでいけたらいいのに。と考えていたのです。」
また、ここで彼女は涙ぐみます。
「そして、今では、自分も早く楽になりたいと思っています。もう、洞窟のなかの誰もがあきらめきっていて、小さな子供が死んでも、母親も叫びだしたりはしません。ただ、呆然としています」