ヤコブさんが45歳の時に母親は亡くなりました。しかし、最後まで母親らしい言葉をかけてもらうことはできませんでした。
母親は自分自身を犠牲にして息子を育てたのだから、息子が自分のために働くのは当然だと考えていたのです。
ヤコブさんは、とっくに母親から愛情をもらうことは、あきらめていたようです。そして、人生のほとんどを母親と2人きりという環境で暮らした彼の中には、女性に対する不信感や恐れがあったのだと、彼女は後に話してくれました。
彼にとって、一番近い存在であり、力を持っていた人間が、自分を受け容れてくれず、いつも感情をさらけ出して、子供を虐待していた母親であったのです。
そんな生育環境が、彼の中に、女性に対する恐怖や不信を根づかせていったのでしょう。
そんな理由から、彼は生涯、女性と深い間柄になることを避けていたようです。
また、女性に限らず、他の人間との関係もきわめて希薄だったとのことです。
それは、人と接する機会が非常に少なかったという理由もさることながら、人との親密な関係というものを知らずに育ったという悲しい背景が大きく影響していたのでしょう。