「私は、小さい頃よく母に『なんで木のスプーンがないの?』と聞いていました。
母は私がテレビのアニメか絵本なんかで木のスプーンを見て、興味を持って欲しがっているのだろうと受け流していたのですが、私はどうしても木のスプーンが欲しくて、欲しくてしょうがなかったのです。
木のスプーンで食べたらすごく美味しいだろうなっていつも思っていたのです。
今から考えると、ジェイミーが木のスプーンを使っていたんです。
ジェイミーのお母さんが、まだ元気で食事を作ってくれていた頃、木のスプーンでお母さんのお料理を食べていたんです。
だからジェイミーと私の中では木のスプーンで食べたお母さんの美味しいお料理が残っていて、その記憶が木のスプーンとつながっていたようです」
他愛ない木のスプーンの記憶ですが、彼女の中では、はっとするような思い出だったようです。
私はジェイミーという少年に次第に興味を持ち始めていました。わずか7歳という幼さで病気の母親を抱えながら、必死に生きようとしているこの少年の人生がこの後どのように展開していくのでしょうか?