私はたくましいジュリアンの生きざまと同時に、ひどく脆弱な少女の胸のうちを知り、彼女に向かって『強いですね』などと言ってしまったことを悔やみました。
強くなければ生きていけない境遇であり、そしてたくましさを装うためには、まず自分自身を徹底的に欺きとおす必要があるのです。
ジュリアンという少女の奥深くを知った思いがしました。
その後、ジュリアンの人生がどのように展開していくのかと、いつもながらの焦燥感を感じながら、時を進めることにしました。
「17歳です・・・上手にパトロンに取り入った私は、恋人であった家庭教師の男性を捨てました。パトロンは少し変わった人でした。
私はある日、パトロンに全てを告白したのです。自分がほんとうは卑しい身分の出であることを。パトロンは、そんな私を面白がりました。
パトロンはとても退屈していたので、面白半分に私を教育しようとしました。言葉遣いや社交マナー、ピアノ、ダンス・・・社交界に通じるような教育を私に受けさせたのです。」
「なるほど。あなたは彼をどんな風に思っているのですか?」
「・・・どんな風に・・・愛してもいないし、感謝もしてはいません・・・でもこの人に捨てられたらどうしようといつも不安です・・・いつ裏切られるかと心配です・・・」