ジュリアンは虚ろな口調で答えます。
「・・・今はただ、この太った貴族の男に捨てられないように、飽きられないように自分の美しさを維持することだけ・・・他の女の子よりも美しく魅力的でいるように・・・それだけ・・・」
ジュリアンは、大きな空虚感を感じているようです。贅沢な暮らしを手に入れたジュリアンは、ちっとも幸せそうではなく、むしろ何も彼女の心には残っていないように見えました。
飾り立てた外見とはうらはらに、ジュリアンの心の中は、空っぽなのです。
そんなジュリアンに私は聞いてみました。
「ジュリアン、あなたの周囲には、誰か心を開けるような人はいないの?」
「心を開けるような人? そんな人はいません。みんな自分のことに精一杯ですから。それに何もかも嘘と虚飾で固めている私自身が、自分をさらけ出すなどということは出来ません」
冷たく言い放つように、ジュリアンは答えます。その様子はなんだか、自分自身を突き放しているようにさえ感じられます。
「そうですか・・・複雑ですね。ジュリアン、あなたはとても若くて美しいでしょう? そして、パトロンを愛しているわけではない・・・誰か他の男性に心が惹かれるということはないのですか?」
この質問にジュリアンは意外な反応をみせました。
「ふふふ・・・ふふ・・・男を愛するということ?・・・あるわけないでしょう・・・男を愛するなどという意味が、私にはわかりません・・・」
自嘲めいた笑いをにじませながらジュリアンはそう答えたのです。
その様子は、どこか私をぞっとさせるような冷たさと、そして哀しみを含んでいました。