0094.夜這い

「しばらく私は、ほうっておきました。

でもある夜・・・

彼は私の寝所に忍んできたのです。

・ ・・ちょっと話しづらいです・・・」

彼女にしてはめずらしいことです。いつもどちらかというと血の気のない象牙色の頬が赤らんでいます。

「話したくないことは話さなくて大丈夫ですよ」

と言う私の言葉に彼女は

「いえ、もう大丈夫です。

彼が、この夜こうして、私を訪ねることは家の者はみんな知っていたことでした。

「夜這い・・・のようなものですか?」

中学生の女の子に対して使う言葉ではないなと感じながらも、私は適当な言葉がとっさに浮かばず、質問していました。

そんな私の質問に、もはや動揺もせずに彼女は答えました。

「そうです。この時代ではこれが当たり前の風習のようです。

そういえば家の者の様子がおかしかったと気づいています」

「どのようにおかしかったのですか?」

「今日はお風呂に入れられたし・・・あの・・あまりお風呂には入らないのです。

私だけではなく、みなそうですが、それが今日はお風呂に入れられて髪も洗われたのです」

「あなたは大丈夫ですか? ショックを受けてませんか?」



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