私の声はあなたとともに ―ミルトン・エリクソンのいやしのストーリー
シドニー・ローゼン 編(二瓶社刊)
1901年、ネバダ州で生まれたミルトン・エリクソンはきわめて重篤な身体障害を持っていました。
それは、ポリオ、色覚異常、失音楽症、失読症などです。
それらの身体障害によって彼は独自の世界を生み出し、現代催眠とよばれる分野を開拓していったのです。
特にポリオにより、17歳の時に目を除く全身が麻痺したことは彼にとって重大な影響を及ぼしました。
彼は唯一自由になる目を使って、自分の家族を徹底的に観察し出したのです。
そうして、会話の中で催眠誘導を行うという独自のスタイルを形成していきました。
「教えの物語」を聞かせるというのがエリクソンの催眠の秘訣でした。
そして、その物語には、治療を望む患者の問題に特別な意味がかならず含まれていました。
話を聞いているうちに患者は「なるほど!そうだったのか」と自覚し、通常の思考パターンから抜け出していくのが狙いです。
「教えの物語」は覚醒状態で聞けばつまらない話だと思いますが、トランス状態では、誘導的な言葉や意味ありげな沈黙、あるいは意表をつく展開によって突然、無意識の心とつながり、それを機に症状が変化する場合があるのです。
トランス状態で無意識にアクセスすることによって問題を解決し、生き方自体をも変えるという斬新な手法を生み出したミルトン・エリクソンの功績はあまりにも大きいと言えるでしょう。
現在、世界中で催眠というものが正当な評価を受けるようになったのもまさにミルトン・エリクソンがいたからです。
特にこの『私の声はあなたとともに』はエリクソンの入門書としてはうってつけの1冊です。
催眠を全く知らない方でも思わず引き込まれるようなエリクソンのお話しがたくさんあふれています。
読んでいるうちにふと催眠に入っていくような感覚がしてくるかもしれません・・・・・