その他のセラピーの本

いのちのサイコドラマ

マックス・クレイトン、フィリップ・カーター著、松本功訳、群馬病院出版会

当スクールの受講生で精神科医の松本功様が、翻訳書『いのちのサイコドラマ ― マックス・クレイトンによるトレーニング・ワークショップの実録』を出版されました。

訳者の松本功様から、本の内容についてご案内をいただいておりますので、ご紹介させていただきます。

「サイコドラマは、J.L.モレノが開発した即興劇を用いた集団精神療法です。もともとは「療法」でしたが、教育やビジネスの分野にも応用され、個人の成長や組織運営にも利用されています。ロール・プレイもそのひとつの例です。

 モレノがフロイトに会った時、「あなたは人の夢を分析するが、私は人にもう一度夢を見る勇気を与える」と言ってフロイトを面食らわせたそうです。

 そのように、サイコドラマは舞台の上で夢や、こころの真実を表現します。自分が主役になったり、脇役(補助自我といいます)や観客になって、舞台を潜在意識と言い換えると、そのままヒプノになるかもしれません。ヒプノの学びも一段と深まるかもしれません
・・・。

 原著者のマックス・クレイトンは、モレノとその妻ザーカに直接師事したサイコドラマティストです。本書は、サイコドラマティストの卵たちをマックスがトレーニングしている様子をビデオに撮ったものを文字に起こしたものです。

 セッションに対する振り返りも共著者としています。参加者が自分自身と向き合い、そのことを実名・写真入りでオープンにできること自体が希有のことです。そういう意味でも貴重な本と言えるでしょう。

 訳者の松本は、マックスに直接師事しています。サイコドラマを経験していないと分かりづらいことが多々あるかもしれませんが、案外ヒプノを経験している方には深いところでつながると思っています。(我田引水ですが、値段以上のことはあると思っています)どうぞ一度手にとってみてください。」


夜と霧

ヴィクトール・E・フランクル著(みすず書房刊)

著者であるヴィクトール・フランクルは第2次世界大戦でアウシュビッツ強制収容所、ダッハウ強制終了所生活を強いられた医学博士であり、哲学者です。

フランクルの妻も、両親も弟も強制収容所で亡くなりました。

飢え、寒さ、残虐行為という絶えず命を脅かされる極限状態のなかで人間は2つのタイプに分かれると彼は言っています。

1つは生きることに目的を持つ人間であり、もう1つは目的を持たない人間です。

フランクルはニーチェの「生きる理由をもつ者は、どのような状況をも耐え抜く」という言葉を好みました。

そうしてもっとも過酷な状況にあってもなお、人間には状況をどうとらえるか選択し、そこに意味を見出す自由がある、というのが彼の論理でした。

彼は辛い収容所生活のなかで、生きる意志を与えてくれそうなことに思いをめぐらします。

常に妻の姿を心にありありと思い浮かべていたために目の前に小鳥が現れたとき、それが妻の化身に思えてしまうほどです。

また解放された自分が強制収容所での人間の心理について、講堂で聴衆を前に語っている姿を思い浮かべたりします。

このようにしながら彼は生き延びたのです。

彼は後にロゴセラピーという理論を生み出します。

フロイトなどの精神分析医が生きることを単なる衝動や本能の満足であるとし、アドラーが力への意志が人間の行動の源泉であるとしたのに対して、フランクルは生きる意味への意志を最も重要な人間の原動力であるとしたのです。

彼のこのロゴセラピーの理論は、私個人も大きな影響を与えらています。

たとえ、肉体や行動を束縛されたとしても誰一人として、自分の心の中を束縛できる者はいないのです。

自分の心の中だけは誰も侵すことができない唯一の場所だということを私に教えてくれた貴重な1冊です。

与えられた環境の中で、どのように生きていくか、また死んでいくのかを考えて実行しようとすることが人間として人間らしく生きるという意味ではないでしょうか。

心理学を学ぶ方はもちろんのこと、生きるということの原点を考えるすべての方にお勧めしたい本です。


人間のタイプと適性―天賦の才 異なればこそ

人間のタイプと適性―天賦の才 異なればこそ

I・B・マイヤーズ著(日本リクルートセンター出版部刊)

著者であるイザベル・ブリッグス・マイヤーズはMBTI(マイヤーズ・ブリッグス性格類型検査)という人間のタイプを測定するテストを開発した人です。

彼女自身は正式な心理学教育を受けたことはありませんでしたが、地元の銀行の支店長のはからいで統計学と人事検査について学びました。

その後ペンシルバニア州の多くの学校に協力を依頼して何千人もの生徒に実施したのをはじめ、医学生や看護学生を対象に研究をしました。

そうして、それぞれの人間が物事をどのようにとらえ、判断するかという視点から16のタイプに分類したのです。

まず人間には4つの特性があるという前提のもとにそれらのタイプは分けられています。

その4つの特性とは、感覚、直感、思考、感情です。

このそれぞれの組み合わせが基本的特性をつくり、そこから一定の価値観、欲求、習慣、特質といったものが生まれてくるとしています。

たとえば感覚型の人には、話の内容をすばやく明確に伝えなければならない。

さもないと問題の解決は期待できない。

直感型の人に支援を要請するには、可能性を示唆して気を引かなければならない。

思考型の人には目的をはっきりと伝え、理路整然とした状況説明をする必要がある。

感情型の人には関係者にとって重大な意味を持つ問題なのだ、と感情に訴える必要がある。

など性格分類したうえでそれぞれのタイプとの関わり方を提示しています。

このように1人1人の性格の特徴がわかれば、職場などで意見が対立したりせず、問題が片付くケースが増えるのではないでしょうか。

またそれぞれの特性の組み合わせのタイプがどのような分野で成功を収めやすいのか、なども詳しく述べられています。

これは心理学の分野の統計学による分類なので、普段、血液型占いや動物占いなどに辟易している男性にでも受け容れやすいでしょうか。

職場での人間関係の改善のために、または彼女や奥様との会話のエッセンスとしてなど幅広く使える1冊です。

心理学に興味のない方でも自分や家族、周囲の人たちのタイプを推察して今後のおつきあいに活かしてゆくことができる本です。

ぜひ一読してみてください!