3度目の前世は、黒褐色の肌をもつアボリジニーの少年ファンジでした。
この少年は白人のスポーツハンティングの対象として、撃たれて死にました。
そこで、動物が狩られる時の恐怖を、学びます。
彼女はセッションを重ねるごとに迅速にそして深い催眠に入るようになっていきました。
私は急速に催眠に入れる手法を使い、新たな前世へと誘導しました。
そうして次に彼女が訪れた前世は、またもや意外な人生でした。
「今、あなたはどこにいるのですか?」
「土の上です・・・土の上を歩いています。腰に毛皮のようなものを巻きつけています。
子供です。少年です・・・・6歳・・・いえ7歳になったばかりです。
髪はすごく短いです。そう・・まるでパンチパーマのように縮れています。
手も足も顔もみんな黒いです。体全部が黒い・・・黒褐色です」
この前世での彼女は、有色人種の少年であるようです。
「今、君がいるところはどんな場所? なぜ、そこにいるの?」
「今、僕は家に帰るところ」
彼女は、また、いつものように前世での自分の肉体に入り込んだようです。
「テントみたいな家が、ちらほらあります。土でつくった家です。
かまくらみたいな家です。人が何人かいます。
男の人も女の人も、子供もいます。みんな、僕の体と同じ色をした人たちです。でも、色の薄い人も濃い人もいます。
男の人は、上半身はみな裸です。腰の部分には何か巻きつけています。あっ・・・女の人も同じような格好です。上半身も裸です。
小さな子供は裸です。何も身につけていません」
「そこで、みんな何をしているのですか?」
「髪を頭の上のほうでおだんごみたいに結った女の人が、今、火をつけようとしています。家の外です。たぶん料理に使うための火だと思います」
「どうやって、火をつけようとしているの?」
「まきのようなものを立てて、火打ち石のようなものを思いっきり打ちつけています。ものすごく力が必要なんです。その女の人は耳に金属のような輪をつけているみたいです」
今回の前世は、いきなり、悲惨な状況からの幕開けではありませんでした。
この前世は比較的、穏やかな人生だったのだろうかという思いが、私の頭をかすめました。
しかし、どちらにせよ、彼女の潜在意識が選び引っ張り出してくれた前世なのですから大きな意味があるに違いありません。
ここからは、この前世での日常を聞いています。
「ご飯を食べる時は、外で食べます。家の前あたりで食べます。家に入るのは寝る時だけです。家は10戸くらい建っています。
ここは、森の中のようです。森の奥に少し開けた土地があって、そこは粘土質のような地面です。そこに10戸くらいの家をそれぞれの家族が建てて、暮らしています。
食べ物を盛るための器などもここで作っています。土をこねて、焼いて作ります。
・ ・・・・いま、男の人たちが帰ってきました」
「男の人たちはどこから帰ってきたの?」
「狩りです。サバンナのような場所で動物を狩ってくるのです。その動物をみんなでかついで帰ってきました」
「あなたはどんな気持ち?」
「嬉しいです。やった!という気持ちです。成功です」
「その動物の肉は食べるのですね?」
「はい。でも食べるだけではなく、すべて使います。肉はすみからすみまで全部食べますが、毛皮はかぶったり、衣服にしたりします。
動物の骨はテント(家?)の骨格部になります。角は楽器とか武器になります」
「楽器とは?どんなもの?」
「笛のようなものや、太鼓のようなものや、打楽器のように使うものが多いです。僕たちはいつも、その楽器で練習をしています」
「何のために練習をしているの?」
「お祭りかな・・・儀式です。そうだ、成人の儀式です。大人になるための儀式があるのです」
「あなたは、その儀式に出たことがあるの?」
「僕は、まだ子供だから出ていません。見ているだけです。でも、早く出たいな。早く大人になりたい」
「大人になったらどんないいことがあるの?」
「狩りに行けるし、みんなを守れるし、結婚もできます。でも、大人になる儀式は難しいです。
頭に葉っぱみたいなものをいっぱいつけて、熱く焼いた石を地面に並べます。その石を踏みながら、木の棒をくぐったり、飛び越えたりしています」
「熱くないの?」
「大人の男だから、大丈夫です」
「友達はいる?」
「うん。一緒に虫をつかまえたり、踏みつぶしたりして遊んでいます。それから、木に登ったり、狩りごっこをしています。
でも、家の手伝いもたくさんします。水を汲みにいくのが僕たちの仕事です」
つぎに、私はその前世での家族について質問しています。
「僕は、7歳です。でも、あまり年齢とかの概念はないみたいです。僕の家族は、お父さんとお母さんとお兄ちゃんと弟と妹です。
弟か妹かわからないけど、僕よりも小さい兄弟が3,4人いるようです。
お父さんは、背が高いです・・・ここの男の人はみな細長いです。でもみんなとても筋肉質の体をしています。
お母さんは、けっこう太っています。女の人は太っている人が多いです。あっ・・お母さんはお腹に子供がいるみたいです。また、生まれます」
「家族は、みな、仲が良いですか? 家族のなかで特に親しみを感じる人はいますか?」
「弟はかわいいです。僕のあとばかりついてきます。そして、僕の真似ばかりします。
お父さんは怖いです。すぐ暴力をふるいます。
でも、親はみな、そういうものだと思っています。親にとって、子供は働き手であるのです。だから、なるべく男の子を産みたいと思っているようです」
「いま、お父さんが僕を呼びました。僕の名前は、ファンジです」