第6章 1つの魂から生まれた元道ときく
0085.「その人」の存在とは
前世療法のセッション中には、実にさまざまなことが起こります。
セラピストとして活動している時の私自身は物質世界にも精神世界にも偏らずニュートラルな心を保つように心がけていますが、時として科学では証明できないようなことも体験することがあります。
彼女がセッション中、いつも同じ男の人がそばにいるように感じるというのも、もしかするとその次元での現象なのかなと考えました。
また彼女自身の心が生み出している幻想である可能性も考えていました。
彼女にその男の人が誰なのか知りたいかと私は尋ねてみました。
彼女は少し迷ってから、「はい」と答えました。
いずれにせよ、その存在が彼女にとって意味のあるものであることは間違いないだろうという私の心の声に従って、あえてその存在を探すための前世回帰をすることにしたのです。
そうして私たちは、彼女をいつも迎えてくれる「その人」の存在を突き止めるためのタイムトラベルへと出発することにしました。
→ 筆者 ソウルミッション・セラピスト 中野日出美の プロフィール
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0086.意外な前世
彼女の潜在意識が誘導してくれた前世での最初の場面は、土を踏みならしたような小さな庭に面した日本家屋とおぼしき場所から始まりました。
「庭・・・です。広い庭園とかではなく、個人の家の庭です。その庭に面した部屋にはすだれが掛かっていて、今、そのすだれは上がっています。
庭に向かって文机があります。その机の上に長い巻物を広げて、何か書いています。
たぶん、自然光を利用して書き物をしているのだと思います」
「書き物をしているのが、あなたですか?」
「そうです。私です。私は髪がとても長いようです。両耳の前の髪を細い紐で結わえています。書き物をするのにじゃまにならないようにです。
朱色の袴のようなものをはいています。着物は重ね着をしています。一番上の着物は緑色です」
「あなたは今、何を書いているのですか?」
「・・・何かを写しています。何かを見ながらその字を書き写しているようです。何のために書き写しているのかはわかりません。
部屋には2人の女の人が座っています。・・・たぶんこの人たちは侍女だと思います」
「ではあなたの国は日本ですか?そしてあなたは身分の高い女の人なのですか?」
「日本です。私は田舎に住んでいます。田舎の貴族の娘のようです。家もそんなに大きくはありませんし。立派ではありません。でもそれなりの身分はあるようです」
彼女は日本で生きた前世へと初めてたどり着いたようです。
彼女が生きたこの前世での時代や生い立ちを知るために、私はこの前世での幼少時代へと導きました。
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0087.私の名前は・・・
「私は5歳です。お父さんがどんどん遠ざかっていきます。
・・・お父さんは帰ってこなくなりました。
お父さんは政府の官僚のような仕事をしていたようです。殺されたのです。政略的に邪魔だったので殺されたのです。派閥争いです。
私はお父さんもお母さんも大好きでした。
お父さんは私のことをいつもきくの上と呼んでいました。でも本当の名前ではありません。
私の本当の名前はたぶん、きく・・か、きくのという名前だと思います。お父さんは一人娘の私をとても可愛がっていて、ふざけて、きくの上とお姫様のように呼んでいたのです。
とても私は幸せでした。こじんまりとした家でしたが何不自由なく暮らしていたと思います」
「お父様が亡くなってからはきくさんの生活は変わりましたか?」
「・・・お母さんの弟、私の叔父がこの家の後継人となりました。
そしてお母さんは尼さん?のようになりました。・・・在家出家というものらしいです。
剃髪して・・・お母さんの長かった髪は肩くらいに切られました」
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0088.鮮明な前世体験
いつもと変わらず彼女は、前世での生活を詳細にみているようです。
彼女は、私の質問によどみなく答えます。
いつものように細かく、わかりやすく説明してくれます。しかし彼女の驚くべき点は私の質問に答えてくれるだけではなく、催眠に入っている間中、答えてくれている何倍もの状況や光景を見たり、聞いたり、感じたりしているということです。
彼女は、いつも催眠から覚醒後に彼女が見たものや聞いたことを細かく私に説明してくれます。
それらの説明の中には当時の前世での人格の感情のディテールや、建物の中の家具の配置や、洋服の模様、調理器具や食器などの形やデザインなども含まれます。
まるでビデオカメラで録画しているかのように前世での体験が彼女の記憶には刻まれているようです。
この前世でも、こじんまりとした家とその小さな庭にやってくる鳥たちの可愛らしいさえずりや庭をぐるりと囲んだ垣根の様子をはっきりと彼女は、言葉で描写してくれました。
彼女の場合は最初のセッションからこのような能力がありました。
しかし多くのクライアントさんの場合は何度か催眠を経験していくうちに少しずつ明瞭に前世を体感する人が多いように感じます。
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0089.私の好物は・・・
「食事は1つずつワイングラスのように足がついた食器でいただきます。小さな御膳というか、よく旅館などの食事の時に出される小さなテーブルのようなものに1人ずつ配膳されます。
雑穀米のようなものと山菜・・・ぜんまいとかそういうものと・・汁とお漬物です」
「そう、喜久乃さんの好物はなんですか?」
「・・・くるみを黒糖でコーティングしたようなお菓子が好物です」
私はコーティングというこの前世の時代にはなかったであろう言葉が、ほほ笑ましく思えました。
「それは誰かが作ってくれるものですか?」
「いいえ、買うようです。そういう物売りが定期的にやって来るのです」
「普段は誰かと遊んだりするのですか?」
「侍女と・・・でもその侍女たちもみな身分の高い家の娘さんたちです。身の回りの世話や話し相手になってくれたり、一緒にお勉強をしたりします。掃除や選択や食事の支度などは別の立場の女の人たちがやります」
私は今までになく前世での彼女の生活が豊かで安全であることに、ほっと胸をなでおろしていました。
まだ今のところ「いつもの人」らしき男性は現れていないようです。
そこでその前世での時をもう少し進めてみることにしました。
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0090.ぼさぼさの眉毛
「私は15歳です。朝です。すだれを上げて日記を書いています。
いつもここで私は日記のようなものを書いたり、歌や好きな本を写しています。本は・・・人生教本のようなものです。
本はとても貴重なものです。だから借りてきた本を自分のところに残しておくためにこのように写し取っているのです」
これで最初の場面で彼女が、なぜ一生懸命に巻物を書き写していたのかという理由がわかりました。
「あなたはどんな容姿をしているのですか?」
「眉毛が・・・ぼさぼさです。生えたい放題に生やしているという感じです。恥ずかしい・・・
まるで手入れのされていない眉毛です。それを白粉のようなもので塗りつぶして、その上に黒の墨のようなもので丸を描いています。・・・ヘンですね。
私は小柄です。とても体が細くて華奢です」
「そう・・・今のあなたみたいに?」
「いいえ、今の私よりも、もっと細くて華奢です。顔もシャープで、横に長い目をしています。目は狭い幅の二重です。口も薄くて、薄い色の紅をさしています。そして腕には産毛が生えています。・・・・ああ、恥ずかしい」
彼女は少女らしい照れをみせながら自分の姿を描写してくれました。
現在の彼女自身も華奢な方ですから、きくさんはかなり小柄な女性だったのでしょう。
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0091.葵の上が好きです
そしてきくさんは『源氏物語』の葵の上が好きなのだと話してくれました。
そこで私は紫式部は今あなたと同じ時代に生きているのですかと聞いてみました。
するときくさんは「違います。生まれる前から『源氏物語』はありました」と答えました。
私はそれまでの喜久乃さんの生活風景から今回の前世が平安時代のものではないかと思っていました。しかしこの返事から察するにもう少し後のことなのでしょうか。
「きくさんの生きた時代は平安の頃ですか?」
「はい、そうだと思います。たぶん後期の頃なのではないかと思います」
私にとっては平安時代は平安時代であり、前期も後期も違いはよくわかりませんが、たとえば昭和といっても前半と後半では人の感情も政策も文化も大きく変化しています。
そう考えると平安時代でも生活の風景はその時流によって微妙に違うものなのでしょう。
とりあえず国風文化を思い描きながら誘導することに決めた私は、さらに質問を続けました。
「葵の上のどんなところが好きなのですか?」
「・・・毅然としたところ・・だそうです」
後で聞いたところによると今生での彼女は特に葵の上に思い入れはないそうです。面白いですね。
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0092.いつもの人との出逢い
それからさらに、きくさんの人生での生活を聞いています。
「普段の生活では、侍女たちとおしゃべりをすることが楽しみです。身の回りのこととか、勉強の話や着物や髪のことなどを話します。
今の生活にはなんの不満もありません。お父さんが亡くなっても叔父さんがしっかりと家を守ってくれているので安心して暮らしています」
「ではきくさんの人生での転換期となる場面へとすすんでください」
「・・・叔父さんが友達を連れてやって来ました。男の人です。官僚仲間のようです。
私は庭にいました。お互いに垣間見たという感じです。初めて男の人が来たのでびっくりしています。
それは実は縁組だったのです。少し経ってから手紙を叔父さんが持って来ました。あの男の人からの手紙です。恋しい気持ちを歌にして届けてきたのです」
「その男の人はあなたをいつも中間世で迎えてくれるあの男の人ですか?」
「そうです。あの男の人です」
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0093.私はまだ子どもでしたから
とうとういつも中間世で彼女を迎えてくれるいつもの男の人との関係がつかめそうです。
「その手紙を受け取って喜久乃さんはどうしたのですか?」
「もしその気持ちに応えたいという時でも、最初は女性は素っ気ない返事をするのがしきたりのようです。そして本当に嫌で、断る時は無視をするのが決まりなのです。
私は本当は無視をしたかったのです。男の人に全く興味がなかったのです。まだ子どもでしたから」
まだ子どもでしたから。と中学生の彼女は言いました。
「彼はどのような人なのですか?」
「ヒゲをはやしています。背の高い、顔立ちのはっきりとした人です。男っぽい印象です。でも野性的な人ではありません。
インテリの知識人という感じです。性格は堅実で落ち着いた人です。年齢は私よりも10歳くらい上です」
「なるほど。それから彼とはどのような関係になったのですか?」
「私の周りの人たちはこの縁組を良縁だといってとても喜んでいます。彼はエリートなのです。
叔父さんは私に返事を急かしています。あまりにも急かすので侍女の誰かに適当に返事を書かせて返信しました。
そうするとすぐ、またお会いしたいと書いた手紙が返って来ました」
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0094.夜這い
「しばらく私は、ほうっておきました。
でもある夜・・・
彼は私の寝所に忍んできたのです。
・ ・・ちょっと話しづらいです・・・」
彼女にしてはめずらしいことです。いつもどちらかというと血の気のない象牙色の頬が赤らんでいます。
「話したくないことは話さなくて大丈夫ですよ」
と言う私の言葉に彼女は
「いえ、もう大丈夫です。
彼が、この夜こうして、私を訪ねることは家の者はみんな知っていたことでした。
「夜這い・・・のようなものですか?」
中学生の女の子に対して使う言葉ではないなと感じながらも、私は適当な言葉がとっさに浮かばず、質問していました。
そんな私の質問に、もはや動揺もせずに彼女は答えました。
「そうです。この時代ではこれが当たり前の風習のようです。
そういえば家の者の様子がおかしかったと気づいています」
「どのようにおかしかったのですか?」
「今日はお風呂に入れられたし・・・あの・・あまりお風呂には入らないのです。
私だけではなく、みなそうですが、それが今日はお風呂に入れられて髪も洗われたのです」
「あなたは大丈夫ですか? ショックを受けてませんか?」
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0095.仕組まれた結婚
前世での彼女であるきくは、今生の彼女とちょうど同じくらいの年齢です。
その時代では当たり前のことであっても、現代の少女にとってはやはりショックなことであることは間違いないでしょう。
ところが彼女の答えは意外なものでした。
「くそっと思っています。びっくりしましたが、すぐに事情が呑み込めました」
きくさんは、意外とタフな性格の女性のようです。そして私はいつもの彼女からは聞くことができないような子どもらしい言葉遣いに、ついにんまりとしてしまいました。
「私はまだ子どもだったので、そのような男女のことがよくわかりませんでしたが、3日間通って来るのがしきたりのようです。
3晩、通って来て、夜が明ける前にいつも男の人は帰って行きます。
そして、最後の日の朝、枕元に丸いお餅が置いてあります・・・
それがどうも結婚した時の儀式のようなものらしいです。ヘンですけど・・・
そのお餅を見て、私は、ああ結婚したんだなと感じたのです」
たいへん興味深いしきたりです。当時の結婚の形が通い婚であるということは知っていましたが、そんなに細かい知識はありませんでしたので、大変面白いと私は感じました。
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0096.結婚は嫌なもの
さらに彼女はこのように続けます。
「それに全くプライバシーはありません。その男の人が寝所に忍んで来た晩も、すだれ1枚ごしには侍女が寝ています。
私はそれでとても恥ずかしかったのを覚えています。結婚は、やはり嫌なものだと思いました」
彼女はいつものように前世での人格の感情をはっきりと感じ取っています。またこの前世回帰では、なぜか彼女は恥ずかしがったり、嫌がったりと感情を表出することが多いようです。
その理由はあとになってわかるのですが、大変意外なものでした。
しかし、この段階ではまだ、いつもと少し様子が違うなと感じる程度だったのです。
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0097.夫の職業は陰陽道
さらに私は、結婚した男性について詳しく聞いています。
「夫となったその男性はどんな仕事についている人なのですか?」
「天文学などを専門に研究しているようです・・・陰陽道だそうです」
「陰陽師ですか?・・・では呪術とか占いでは・・・」
恥ずかしながら、ここでも私の知識と教養の浅薄さが露見します。
私は陰陽師というと霊感を使って占いや霊媒のような仕事をする呪術師というようなイメージしかありませんでした。
ところが実際には陰陽師の存在は、当時ではかなり重要なポストに置かれていたようです。
陰陽師は、宮中において、天文や暦学、易学、時計学などを司っていた官職だったそうです。
そして宮中の営繕を行う際の吉日選定や土地や方角などの吉凶を占うことで、遷都の際などに重要な役割を果たす機関であったのです。
きくさんの夫は陰陽道という神職の中の天文の分野の官人であったようです。
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0098.2人とも私です・・・
「彼の名前はわかりますか?」
「はい・・・元道・・しみず・・かな」
「では、元道さんのことをもう少し詳しく話してみてくれますか?」
「それが・・・実は不思議なんですけれど、彼も私なんです・・・」
私は彼女の言った意味がわからず、初めは彼女が言葉の使い方を間違えているのかなと思いました。
彼女にしてはめずらしいことだとも思いました。ところが彼女はそのあと、このように続けました。
「あのう・・・よくわからないんですけれども、きくも元道も両方、私のようです。
こんなことってあるんでしょうか・・・でも2人とも私です。だから2人の感情が手に取るようにわかります」
私にとってもこれは初めてのケースでした。
前世療法のセッションを何度も経験しているので、人間が何度も生まれ変わり、別の人格としてさまざまな時代や国で人生を送るのだという可能性を理解していました。
しかし、今回のように同じ時代におなじ国で1つの魂が2人の人格に宿るというケースは今までなかったのです。
「元道さんときくさんの両方があなたなのですか?」
「はい。そうです。両方が私です」
と今度はきっぱりと彼女は答えました。
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0099.2人の類似点と相違点
「なぜそんなことが起こるのかわかりますか?」
「今はわかりません。でも後でわかるようです」
「わかりました。では後で教えてください。それではその後の2人について教えてください」
「2人の性格はとても似ているところと、まったく正反対のところがあります。元道もきくもとても真面目で固い人間です。
2人とも責任感が強く浮ついたところはありません。そして勉強熱心です。
元道は学者肌で女性に対して一途です。
きくは、恋愛に対してまったく興味を持っていません。どちらも飄々とした性格で周囲から見るとつかみどころがないようにみえるでしょう。
ただ元道は男性ですから上昇志向で、きくに比べて出世に対する野心があるようです。
きくの方はひじょうにマイペースな性質で、他者から見られる自分というものにはあまり興味がなく、自分の内面で起きていることの方により興味があるようです。
元道はきくのそのような部分にも魅かれたのです。
それに対して、きくの方は今の生活に満足し、まだ年齢も幼いため異性にまったく興味がありません。
だから、きくは元道に対してそっけない態度をとります。
また、きくの周囲の者たちが結婚は形式だけのものだと言っているので、きくもそういうものだと思っていました。
ところが元道があまりにも頻繁にきくの元を訪れるので、きくは『何故?』と思っています。
『形式だけのことなのに、何故こんなに頻繁にこの人は私のところにやってくるのだろう、本当は来ないで欲しいのに』
と感じています。
私はこの2人の気持ちが手に取るようにわかります。
それはどちらも自分だからです」
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0100.魂の分裂
「元道は今で言うと神官のような立場です。
そして不思議な力というか、霊感のようなものを持っています・・・
霊能師のような力でしょうか・・・
だから元道は最初からこの出会いが偶然ではなく必然であるとわかっていたのです。
今、出会うべき人だったと認識しています。最初からわかっていてやって来たのです。でも元道でさえも2人が同じ魂から生まれた存在だとはわかっていません」
彼女は元道ときくが同じ魂から生まれた存在だと言いました。
「同じ魂から生まれたとは、どういう意味ですか?」
彼女はめずらしくほんの少し間をおいてからこう答えました。
「まだよくわかりませんが、どうも1つの魂が分裂して同時期に複数の人間として生まれてくることがあるらしいのです」
「あなたはどうやってそれを知ったのですか?」
「誰かが教えてくれています。おそらく元道だと思います。催眠に入るといつも元道がそばにいて、いろいろなことを教えてくれているように思います」
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0101.2人の結婚生活
元道ときくのの結婚生活は一風変わったものでした。
「元道は、きくのことを愛しています。
彼はきくに非常に魅かれています。きくののクールだけれども好きなことに一途に打ち込んでいる姿を大変好んでいます。
いつも書き物をしているきくの横顔が気に入っているようです。
また、きくの女のいやらしさがなく、清らかなところを愛しています。
きくは体の形も清楚でした。
元道は、清く純粋なものを愛する傾向があったのです。
そういう意味で、きくのが恋愛や男に溺れない性質であったところも美しいと感じていました。
また、きくとの会話も楽しんでいたようです。
きくのの明晰さを感じていたのです。
一方、きくの方は、元道がそばにいても、まるでそこにいないかのように、振舞っています。
ベタベタとした男女関係を望まず、お互いに好きなことをするのが好ましいと感じています。
だから元道が来ていようがいまいが、かまわずに常に自分のペースで暮らしています。
そして、そんな生活の中でのきくのそのような風情が、一層彼女の清らかさを際立たせたのです。
いつも庭に面した机で書き物をしていたきくの横顔を愛しそうに元道は見ています。
そんな生活を元道は楽しんでいます」
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0102.宮仕えをするきく
マイペースなきくの性格を元道は好み、2人の結婚生活は穏やかに過ぎてゆきました。
次に私は、この2人の人生での大きな転換期となる場面へと誘導しました。
彼女はすぐにその場面へと入っていきました。
「きくは、入内しました」
入内とは王や皇帝などの后妃が暮らす場所である後宮で宮仕えすることです。
きくは女官として宮仕えをすることになったのです。
「宮仕えはとても名誉なことです。親族一同がとても喜んでいます」
私はなぜ結婚をしたきくが、宮仕えをすることになったのかと不思議に感じました。
「なぜ結婚をしているきくさんが、宮仕えをすることになったのですか?」
「妻であっても入内することはあります。
私は叔父の勧めで、入内することになりました」
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0103.後宮での仕事
「夫である元道さんは、きくさんが宮仕えをすることについてどう思っているのですか?」
「元道は、穏やかな結婚生活に満足しているので今のままでよいと思っていますが、宮仕えをしても元道はいつでもきくに会うことが出来る立場なので、そんなに心配はしていません」
「そうですか。きくさんはどんな後宮でどんなお仕事をするのですか?」
「着物と書物の整理係のような仕事です。これはきくにとって嬉しい仕事です。
さまざまな種類や色の着物の合わせ方を考えたり、整理したりするのはとても楽しいことです。
また書物の整理係の方は、図書室のような場所で働くことが出来ます。
書物の大好きなきくにとって、この仕事はたいへんワクワクするもののようです」
彼女は心の深いところにある記憶をたぐるようにまぶたを少し震わせながら話し続けます。
「きくは自分の部屋も持っています。そして自分の身の回りの世話をしてくれる侍女もいます」
「今、きくさんはどんな気持ちですか?」
ひとつ、深い呼吸をした後、彼女は私の質問に答えます。
「ああ、就職したんだなあ・・・と感じています。家を離れたのはこれが初めての経験です。
あまり外出もしない生活でしたから、今の生活がとても新鮮です。そして仕事に生きがいを感じています」
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0104.わたしは恋におちました
「元道さんとの関係はどうなりましたか?」
彼女は穏やかな表情で答えます。
「夫との関係も良好です。元道のことをとてもいい人だと思っています。
元道は、私の生き方を認めてくれています。ありがたいと感じています」
「では、そこでの生活についてもう少し詳しく教えてください」
「ものすごく華やかな世界です。たくさんの人たちがさまざまな芸を極めています。
そう・・・芸術が本当に盛んです。・・・まさに風流で風雅な世界です」
彼女はうっとりとした、口調で少し息をはずませるように言いました。
「では、またこの二人の人生での重要な場面、シーンへと進んでください」
さらに私はその後の二人の人生の展開を探るために彼女を誘導します。
「・・・なにかの儀式のようです。・・・行事でしょうか・・・流鏑馬(やぶさめ)が行われています」
流鏑馬(やぶさめ)とは疾走する馬上から的に鏑矢(かぶらや)を射る儀式です。神事などの際に行われていたようです。
さらに彼女は続けます。
「それからお面をつけて、ある男の人が舞っています。私(きく)はそれを見て感動しています。
私はその男の人にものすごく魅かれています。・・・お互いに一目ぼれでした・・・私はこの時、生まれて初めて恋に落ちました・・」
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0105.元道にはない魅力
「元道さんに対する気持ちとは違う感情ですか?」
「はい・・・違います。元道のことを尊敬していますし、とても感謝しています。また元道は私にとって、親のような保護者のような存在だと感じています。でも恋愛感情ではありませんでした」
「そうですか・・・ではそのお面をつけて舞っている彼とのことを教えてください」
「・・・彼は武士のようです。武芸をしている人です。精悍なたくましい人です。
まさに体育会系の男性のようです。若々しく明るい性格です。自分にはない部分をたくさん持っている男性です。
・・・元道はインテリで物静かな男性です。彼は、私にも元道にもない力強さを持っています。その部分に私は魅かれたのです」
「なるほど・・・彼ときくさんの関係はその後、どのように展開していったのですか?」
「お互いにとても愛し合うようになりました。年も近かったので。
彼は18歳くらいです。
頻繁に彼と会うようになりました。しばらくそのような状態が続きました」
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0106.泣き叫びたいほどの苦痛
「そうですか。元道さんはどうしていますか?」
「元道は全て知っていました。それは元道と一緒にいてもきくは上の空だったからです。
今までのきくとは変わってしまったのです。そんなきくの様子を元道は敏感に感じ取っていました。
そして一切表面には出しませんでしたが、元道は激しい怒りを内面に感じていました。
彼は怒っていました。きくを愛している分だけ元道は激しい怒りを感じていました。
きくの方は、結婚とはお互いに妻として夫としての役目を果たす形式だけのものだと考えていたので、あまり罪悪感も感じていません。
でも元道はきくをとても愛していたので、非常に怒りを感じていましたし、彼の高いプライドも傷ついていました。
また、きくが1人の女性としての愛情や感情を持ったのも、元道にとっては嫌悪感の対象となったようです。
それも自分以外の男性に恋をしているのですから、なおさらです。
それとともに、元道自身の心の中に芽生えた嫉妬という感情に対しても嫌悪しています。
・・・ああ・・・そうです・・・泣き叫びたいような気持ちです・・・八つ裂きにしてやりたいほどの気持ちでいます・・・」
彼女の顔は苦痛に歪んでいます。
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0107.激しい怒り
きくが1人の男性を初めて女として愛し、恋焦がれる感情も、元道の激しい嫉妬の感情も同じように手に取るようにダイレクトに彼女は受け取っています。
なぜならば、元道もきくも両方が自分であるからです。
彼女自身にとっては複雑な心理状況といえるでしょう。
「元道は自分はこんな思いを抱えているのに、きくの方は気にとめる風もなく、まったく苦しんでいない・・・
そのことにも激しい怒りを感じています」
元道の心情はかなり悲嘆に満ちている様子です。そこでさらに私は、元道の心情を探ることにしました。
「元道さんは、きくさんが愛した若い男性についてはどう感じているのですか?」
「元道はその男を恨んでいます。自分とはまったく違うタイプのその男を。
ある日、元道はついに我慢が出来なくなりました。我慢の限界がきたのです。
元道はいつものようにきくの部屋を訪れました。
するときくは、まったく悪びれた風もなく、こちらを振り向いて『どうしたの?』という顔をしています」
きくのそんな表情を見た瞬間、元道のなかで何かが壊れ、爆発したのです。
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0108.抵抗するのをやめたきく
「・・・元道は・・・そのきくの顔を見て、とっさに彼女の首を絞めました。
・・・元道は我を忘れてしまったのです・・・こんなことは元道にとって初めてのことです。
もともとはとても冷静でクールな人間ですから」
意外な展開に私は驚きました。しかし、元道ときくの2人にとってとても重要な場面であることは間違いなさそうです。そこでさらにその状況を詳しく調べてみることにしました。
「今の状況をそこから浮かび上がってようく観察して報告してください」
「お互いに向き合っています。2人とも立ち膝でいます。きくの頭は上向きになっています。
きくは最初、驚いた表情で抵抗しようとしましたが、すぐに抵抗するのをやめました。
きくは首を絞められながら、すべてを理解したのです。
それは、きく自身がまさに恋をしていたからです。この時初めてきくは、夫の気持ちがわかったのです。
夫がどれほど自分を愛していたのかを理解しました。
そして自分のしたことがどんなに元道を苦しませ、傷つけたのかを一瞬にして察したのです。
だからきくは、抵抗するのをあっという間にやめてしまいました」
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0109.殺す側と殺される側
「では、元道さんの方はどうですか?」
「元道には殺そうという気持ちはありませんでした。一時の感情でつい首を絞めてしまったのです。
でもあまりにもあっけなくきくは逝ってしまいました。
元道は呆然としています。・・・呆然として何度もきくの名前を呼んでいます」
なんという悲しい幕切れでしょうか。
またなんと複雑な心理でしょう。一つの魂が自分で自分を殺し、そして殺されたのです。
なんのためにこんな複雑で哀しい人生を経験しなければならなかったのかと改めて私は疑問を感じずにはいられませんでした。
「さらにその後の状況を教えてください」
「・・・侍女が部屋に入って来ました。そしてキャーっと叫び声を上げています。
・・・でもその後、親族一同が話し合って、きくは病で亡くなったということにされました。
殺されたきくにとっても、この事件はあまりにも名聞が悪いことだったからです」
「そうですか・・・では元道は今までどおりの生活を続けられることになったのですか?」
「はい・・・その後、元道は54歳で人生を終えるまでその事実を背負ったまま生きました。
でもきくを失ったその後の人生は、元道にとって、無常で辛い人生でした。
彼は大きな後悔と同時に、自分の人生から愛を失ったのです」
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0110.2人の心情
このようにして元道ときくは、それぞれの人生を閉じました。
元道に首を絞められながらも抵抗をせず、元道の怒りと悲しみを受け入れたきくの心情は亡くなったあとは何か変化したのでしょうか。
元道がそのさびしい人生の幕を下ろしたあと、私は彼女に質問しました。
「今、2人の気持ちはどんなですか?」
私の質問に彼女は穏やかな表情と口調で答えました。
「きくは、元道のことをまったく恨んでいません。死んだのちも自分を責め続ける元道を心配しています。
そして、『自分自身を責めないで欲しい、私が悪かったのだから』と思っています。
一方、元道は、亡くなるまでずっと、そして亡くなってからも『なぜ、あの時抵抗しなかったのだ?とうとう自分には女としての感情を向けてくれはしなかった。きくは殺される時もすべてを受け入れ他の男に恋したまま逝ってしまった』と悲しみを背負っています」
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0111.1つの魂が分裂して生まれてきた理由
それにしてもなぜ、このように1つの魂が時を同じくして、別々の2人の人間として生まれてきたのでしょうか。
私は中間世に誘導した後、彼女にその理由を問いました。
いつものように中間世での彼女は、言いよどむことなく、何かを悟りきったかのように説明をしてくれます。
「今回はひとつの魂が2つに分裂して生まれてくることによって、殺される側と殺す側の立場の両方を学んだのです。
つまり殺されることと殺すことによって両方のカルマが相殺されました。
これは生まれてくる前に話し合って決めたことでした。
魂のグループ全体のアイデアというか、ひとつの試みでした。
元道は、きくが自分の半身であることを悟っていました。
なぜならば元道の魂のレベルはきくよりも上だったからです」
「それはどういうことですか?2人は同じ魂から生まれて来たのではないのですか?」
私はとまどいながら彼女に尋ねました。
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0112.進んでいる魂
彼女は落ち着き払って、当たり前のことのように答えます。
「もともとは同じ魂から生まれて来ました。でもその魂の進化具合には差があるのです。
たとえば、1人の人間の体の中でも優れた部位とそうでない部位があるように。
また得意な分野とそうでない分野があるように、1つの魂のかたまり、グループの中でも進化している部分とそうでない部分があるのです。
だからと言って、きくが劣っているということではありません。
きくはきくで、元道よりも優れていた部分があるのです。
元道は、魂の世界というか、霊的な部分できくよりも進んでいたということです」
彼女はためらいもせず、すらすらと私に説明してくれます。
私はそんな彼女にいささか驚き、そして強い興味を感じました。
なぜならば、彼女はなぜこのようなことを知っているのでしょう。
この世に生を受けてまだ十数年しか経っていない一人の少女が、このように魂の分裂の意味を知り、整然と説明していることに、私は驚きました。
そして、何か大きな力が、彼女を後押ししているかのようなエネルギーを感じたのです。
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0113.あの時の元道と今の元道
「なぜ、あなたはそんなに複雑な魂のしくみがわかるの?」
自分の中に膨れ上がった興味を抑えきれずに、私は質問しました。
すると彼女は、いくぶん首をかしげるような仕草をした後、また落ち着いた深みのある声でこう言いました。
「元道が私に教えてくれています。あの時代を生きた元道ではなくて今の元道ですが・・・
そして元道自身は、さらに上のレベルの魂から学んでいるようです・・・」
彼女は、元道を通して、どこかとつながっているようです。
彼女はいったいどことつながっているのでしょうか?
また元道はどんな存在から教えを受けているのでしょうか?
催眠療法中にクライアントさんがハイヤーセルフとつながることは実際に時々あることです。
彼女もハイヤーセルフとつながることができるクライアントさんのうちの1人です。
しかし今回のように元道という存在を通して、さらに高次の存在からメッセージをひとりでに受けるというのは珍しいことです。
彼女とのセッションは、いつもスリリングであり、私にとっても初めての経験となる事象が起こります。
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0114.さらに上の存在からのメッセージ
私はあえて誘導の手綱を彼女に渡すことにしてみました。
「では、元道さんときくさん、またはさらに上の存在からのメッセージをどんどん伝えてください」
彼女は一度深く息を吸い込んでから話し始めました。
「元道は霊性の高い人でしたから、魂の仕組みをある程度理解していました。そして自分の心をコントロールすることもできる人間でした。
しかし、そんな自分が、妻であるきくに対してだけは、その愛情の深さゆえに感情をコントロールできず、命まで奪ってしまったのです。
元道は自分の中の激しい感情にショックを受けています。
きくは、生きている間、ずっと人の気持ちに無関心でした。人の気持ちがわかりませんでした。
そして元道に首を絞められながら、唐突に理解したのです。
自分は人の気持ちがわからなかった。理解しようとしなかった。普段は穏やかな心の中にも激しい感情が芽生えることがあるのだということを。
一方、元道の方は、自分の中にある人間としての激しい感情を知ろうとしませんでした。
だから、突如として表出したその感情への対処の仕方を、知らなかったのです。
つまり、自分の心と他者の心を知ること、そして理解すること、それと同時に自分の心の奥底を知りコントロールすることが2人のこの人生の課題でした。
2人は同じ学びを与えあったのです。
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0115.魂のグループ
そのようにして2人が同じ課題を学ぶことによって魂全体がステップアップしたのです。
「魂全体とはどういう意味ですか?」
私の問いを彼女は、また何かに問いかけるかのように首をかしげ、そして語りだしました。
「魂にはそれぞれグループがあります。どの魂もそれぞれグループに所属しています。
その小さなグループはまたそのグループよりも少し大きいグループに所属しています。
そして、その少し大きいグループはさらに大きなグループに属しているのです。
また、小さなグループ同士が結合したり、交わったりする時もあります。
しかし、大きな視点からこのグループ同士を見ると結局は1つの大きなグループになっています。
私たちの1つ1つの魂は小さなグループになっていて、そのグループ同士は結局は大きな1つの塊になっているということです。
つまり、私たち人間の魂は行き着くところは、1つの大きなグループだということです。
私たち人間は、1つ1つの個でありながら、実は大きな1つの塊であり、その塊の中の1部分に過ぎないということです。
グループの魂たちは、今回の元道ときくのように1つの魂を同じ人生において、2つに分裂させたり、他の魂と融合させたりしながら新たな試みをします」
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0116.とてつもない大きな真理
「何のためにそんなことをするのですか?」
あまりにも壮大なテーマに私は、やや呆然としながら訊きました。
それに対して彼女は平然と答えました。
「学ぶためです。それぞれの魂には課題があります。魂のグループ全体がステップアップするために、1つの課題をみんなでクリアすることもあります。
また、それぞれが役割を決め、分担して課題をクリアするために、学ぶこともあります。
でも、魂は大きな視点で捉えると1つの塊ですから、結局はみんなで1つの大きな課題をクリアするために学んでいるということです。
ただ、それぞれの個である魂が学んだことを持ち帰って、自分が所属する魂のグループに融合するのです。
そのようにして小さな魂のグループが少しずつ進化して、その小さなグループが今度は大きなグループの中に融合するのです」
もしかすると私はとんでもない真理を掘り起こそうとしているのではないかという思いに、心が波立つような、まるで心の中に鳥肌がたつような不思議な感覚を覚えていました。
少しおののきながら私は彼女に尋ねました。
「大きな魂全体の課題とはいったい何なのですか?」
「愛です。愛することと愛されることを学ぶために、私たちは何度も生まれてきます」
毅然とした表情と口調で彼女はこう答えたのです。
さらに彼女は続けます。
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0117.愛を手に入れる方法
「愛の反対は無関心です。誰かを見守っているということ自体が、最高の愛といえます。
また思いやりは、理屈ではありません。その人の心の奥底からにじみ出てくるものです。
相手の気持ちを知ろうとするすること、自分自身がいろいろな経験を積むことによって共感する心を育てることができます。
相手の立場や心に共感することが愛を与え、受け取ることができる心を育てます。
私たち人間はみな、それを学ぶために生まれてきているのです。
それを学ぶためにいろいろな課題を1つずつクリアしながら、生まれ変わるのです」
「愛を感じられない人、受け取ることができない人は、どうすればよいのですか?」
私は愚問とも言えるような質問をしました。
「人間はいつも1人ではありません。常に自分さえチャンネルを合わせていれば、そう、入り口を開いていれば、無制限に愛が流れ込んでくる仕組みになっています。
流れてきても、いつも流れているから当たり前になってしまい、気がつかない人もいます。
チャンネルを合わせようとしなかったり、突っぱねている人もいます。
またあることをきっかけにして、流れ込んでくるようになったりもします。
それが自分に対する愛の気づきによる感動です。
感動する心がきっかけとなるのです」
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0118.ハイヤーセルフからの突然のメッセージ
さらに彼女はいつものように少し蒼ざめた頬のまま話し続けます。
「愛が足りない人は、自分で愛を満ち溢れさせることができないから足りなくなるのです。
そのような人を嫌ったり、遠ざけることなく大いなる愛で包んであげることが大切です。
・ ・・あなたの愛は枯れることはないのです。惜しみなく愛は与えなさい。愛を与えることが全ての解決法です。太陽の日差しのように愛で包み込んであげなさい。
そうすれば生き物はみな幼子に戻るのだから。そのためにはしっかりと寝て、エネルギーをチャージしなさい」
途中で彼女の口調がわずかに変わったことに私は気づきました。
「あなたとは誰のことでしょうか、○○(彼女の名前)さんですか?」
「・・・わかりません」
少し彼女は動揺しているように見えました。
「・・・あっ待ってください・・・わかりました。あなたとは先生のことです」
「えっ私ですか?」
意外な答えに私の方が驚いてしまいました。
「そうです。先生に向けてのメッセージのようです」
確かに当時の私は、あることでとても傷ついていました。そうして同時にどうにもならない喪失感に時々おそわれていました。
また、動物を救うボランティア活動に没頭するあまり、慢性の睡眠不足に悩まされていました。
その問題に対する解決策が今、提示されたというのでしょうか?
とまどいながらも、心の中には意味のわからない感謝と温かいエネルギーが広がっていくのがわかりました。
まだまだ自分自身のことを聞いてみたい気持ちに駆られましたが、これは彼女のためのセッションです。
ヒプノセラピストとしての自分を取り戻すべく、少し時間をおいてから、私はセッションの舵をまた自分自身が握ることに決めました。
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0119.ハイヤーセルフから彼女へのメッセージ
「ありがとうございます。心から感謝いたします。そのメッセージをいつも心の真ん中に置きながら仕事とボランティア活動をしていきます。
では、○○さん(彼女の名前)に対してはどのようなメッセージをいただけるでしょうか?」
「・・・人間はいつも1人じゃないんだ。なんで自分だけ不幸なんだろうと見放された気がするときもある。が、いつも実際には誰かが愛情を向けてくれている。
少なくとも自分に関心を持って見守ってくれているグループソウルがいる。
必要ならばいつでも彼らは何らかの方法で見守ってくれていることを示してくれるものだ。
そのことに気づきなさい・・・と言っています」
「では元道さんときくさんはあなたにどんなメッセージをくれていますか?」
「きくは、自分のやりたいこと、自分の生き方を追求するのはとても楽しいことだ。
そしてとても大切なことだけれども、そればかりにならないようにして欲しいと言っています。
人の気持ちを理解しようと努めて欲しい。人との関係を学ぶことは重要なことなのだからと言っています」
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0120.「いつもの人」の判明
「元道は、当時のきくへの罪悪感と謝罪の気持ちでいっぱいです。
・・・当時のきくと今の私はとても似ているのだそうです。きくの気質を私は多く受け継いでいるようです。
だからずっと私を見守っているです。
そして、こう言っています。
『ずっと見守ってきたし、これからもずっと見守っていくからね。君には今度は自分の道をまっとうして欲しいと思っている』と・・・
2人が現世で生きていた時は、元道が一方的にきくを愛していました。
それから現在までずっときくを見守ってきました。
しかし長い時間をかけて2人の愛の分量は同じになっています。
それが元道ときくの両方にとっての癒しとなっているのです。
『あな、うれしや・・・』と言っているようです・・・
これで彼女にとっての「いつもの人」がなぜ、いつも彼女のそばにいるのかという理由がはっきりしました。
元道は、遠い昔の愛する妻への罪悪感と謝罪の気持ちから、今も妻の分身であり、自分自身でもある彼女を見守り続けているのです。
私は改めて愛の雄大さを感じていました。
またこの壮大な愛の歴史に大きく心が揺さぶられました。
彼女自身もいつもセッションをしている間中、そばにいる男性が誰であるかわかって深い感銘を受けている様子でした。
「私には確かにきくと似た部分が多くあります。あまり他人に関心がなく、自分のやりたいことや、興味のあることには没頭します。
友人たちのように男の子にも興味がありません・・・でも今回のセッションで、それがわかったので、何か変わりそうな気がします」
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0121.前世療法に対する私の正直な気持ち
このように前世療法のセッションでは、ただ前世に回帰して当時の自分とその人生を知るだけで、その後のクライアントさんの人生が大きく変わることが少なくありません。
当時の自分の心の動きを実感して、人生をもう一度振り返ることによって大きな癒しと気づきがあるのが、前世療法の特徴です。
私はいつもこんなとき、前世があるかないかの証明よりも、前世療法による有効性をみんなに知ってもらいたいと強く思います。
また前世での人格を思い出し、その人格の人生を深く掘り下げるという行為は、なんだか亡くなった人を供養することに似ているなあと勝手に考えています。
これはまったく私個人の受け取り方なのですが、前世療法という手段を使うことによって、今まで何百年も何千年もの間、封じ込められてきた当時の人格の思いや苦しみ、悲しみ、後悔、言い残せなかった言葉、やり残した課題などが、開放されるのではないかと思うのです。
それらの感情が解除され、生まれ変わった今の自分に伝えられることによって安心し、はるか大昔に生きた忘れ去られていた1人の人間の心が改めて成仏するような気がしてならないのです。
これはほんとうに私個人の勝手な感想に過ぎませんが、いつもそんな風に感じているというのが私の正直な気持ちです。
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0122.私にとっての調和
このセッションは彼女にとってだけではなく、私にとっても忘れられないセッションになりました。
このセッションで、初めて私はどこかにつながっているクライアントさんから、私個人へのメッセージを受け取ったのです。
その後も、今までに数回このような体験をしています。
私しか知る由もない、知る手段もあるはずがないような私の個人的な生活、仕事、ボランティア活動に対するメッセージが本当にまれにですが、送られてくるのです。
私自身は物質主義にも精神主義にも偏らないように努めながら生きています。
それはどちらもこの物質社会に生まれてきた以上、調和をとりながら生きていくためには必要なことだと考えているからです。
また、ヒプノセラピストという職業上、現実と夢想、霊性と世俗性のバランスを忘れないことが大切だとも考えています。
常にニュートラルな状態でセッションに臨みたいと思っています。
しかし、時としてこのように科学では証明できないような事象が起こることも確かです。
こんな時、私は心からの感謝と愛を、大いなる存在とクライアントさんに感じます。
→ 筆者 ソウルミッション・セラピスト 中野日出美の プロフィール
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